それは、今から三年ほど前の秋からの出来事です…
今僕が住んでいる部屋の隣りに若い女性が引っ越して来たのが事の始まりでした…
もともと霊感が強い僕でしたが、隣人が越して来てからはあり得ないくらい毎晩のように金縛りにあうのです…
隣人が連れて来た霊がちょっかいを出しに来ている…
そのくらいにしか思っていませんでした…
そんな日が一年近くづづき、ぼくは慣れっこになっていました…
そして、その日はやって来たのです……
忘れもしない、春先の天気のよい日曜日の朝でした…
ぼくは彼女と遊ぶ約束をしていたのですが、前日の仕事が忙しく疲れ切っていたので駅まで彼女を迎えに行かず直接家に来てもらう事にしたのです…
昼前にウトウトしていると玄関が開いて誰かが入って来る気配がしました…
静かに…
ゆっくりと……
何の音も出さずに…
彼女が気をきかせて静かに入って来てくれた…
そんなはずはありません…
すぐに気付きました…
横開きの扉が音も出さずに開くはずがないのです…
何の音も出さずにその人の気配はぼくの枕元に…
恐怖を感じた時にはぼくの体は一切動かなくなっていました…
あきらかに枕元にいる霊がぼくの体を抑えつけているのです…
怖くて目も開けられませんでした…
そして恐怖心が最大に達した時に…
バン バン バン
ぼくの寝ているすぐ隣りの床を力強く叩いているのです…
その音が聞こえた直後に金縛りが解け静寂だけが残る部屋に、なんだか寂しさを感じた事をはっきりと覚えています。
それから数日後隣人が心臓の病で倒れ、病院に運ばれたのですがそのまま息をひきとってしまった事を近所の方に聞きました…
あの時、枕元に来ていた霊は隣人の女性の守護霊だったのではないか…助けを求めに来たのではないかと思っています。
最後に亡くなられた女性の冥福を祈り、終わりにしたいと思います。