真っ赤な服の少女

真っ赤な服の少女 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

さてさて。
昨夜はちょっと洒落にならん事になりました。

その日はお酒も飲まず、小説もそこそこにさっさと床につきました。
僕は寝付きの悪い方ですが、十分もした頃、すとんと落ちるように眠りました。

ふと。どれだけ眠った頃でしょうか。
気が付くと僕はうなされていました。
そして、のしかかる苦しさに耐え兼ねて開けた目ではっきりと見たのです。
僕の布団の上に、真っ赤な服を着た女の子が乗っかってはしゃいでいました。
ただ、明らかに異なるのは、その子には首が無かったのです。

俄に恐怖に駆られた僕は、無我夢中で声を絞り出しました。
しかし何故か声は出ず、体も金縛りにあったかのように動きません。
これはまずい、と心底焦りました。
僕が見ているのは、本来見えちゃいけないものだと思ったからです。

なんなんだ、お前はー!

多分、そんな事を叫んでたと思います。
そうしている内に、情けないほど裏返った声がようやく飛び出し、はっ、と気が付いたように意識が浮かび上がるのを自覚しました。

夢か。

目を覚ます寸前、そう僕は心底安堵しました。
どれだけ怖いものも理不尽なものも、目を覚ましてしまえばそれでおしまいなのです。
悪趣味な夢とは思ったけど、少なくとももうこの恐怖は味わわなくていいんだと。

暗闇で目を覚ました現実の僕。
今見た夢の恐ろしさに、額がじっとりと汗ばんでいます。
けれど、夢だったという安心感があるせいか、随分とおかしく思いました。
手抜きでしてる仕事でも疲れるんだな、と。
そして喉が渇いたので水を飲もうと起き上がったその時。
僕は心臓が止まるかと思いました。
何故なら、目の前の暗闇に、うっすらとあの赤い服が浮かんでいたからです。

徐ににゅーうっと手がこちらへ伸びて来ます。
しかし首はやっぱりありません。
夢で見た通りのそれが、現実にいるのです。

僕は慌てて跳び起き、電気をつけました。
すると、そこには何もありませんでした。
ただ、夜の静寂があるばかりで、自分の鼓動が一番耳やかましく鳴り響いています。
それから僕は一睡も出来ず、電気をつけたまま朝まで漫画を読んでいました。
寝るどころか、怖くて電気すら消せなかったのです。
情けない事に、本当に真剣に恐ろしくてたまらなかったのです。
恥も外聞も捨て、誰かに一部始終を話してなだめてもらおうと、携帯に手を伸ばしそうなほどでした。

それから特に何事もありませんでしたが、もしもあれが本物だったら、多分僕は人生で初めて「そのもの」を見た事になります。
どうして自宅でこんな体験をする事になったのか。
理由は分からないけれど、本当に怖い体験でした。

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