添乗員時代の話である。
夏。
修学旅行の添乗で広島市内のホテルに泊まった時のこと。
真夜中、たまらない喉の乾きに目を覚まし、寝ている同僚の脇を通り抜け洗面所へと向かった。
洗面所の蛇口を勢いよく開き、水を飲む。
しかし、一向に喉の乾きはいえず、ますます喉の乾きはひどくなってゆく。
「へんだな…。これじゃ、水っ腹になっちまう。」
私は、これ以上水を飲むのをやめ、布団へと戻ることにした。
部屋の空調の調子でこういった事はたまにある。
案の定、エアコンからは勢い良く風が吹き出している。
『明日にでもホテルの担当者に忠告でもしよう。』
布団に潜り込んだ私は、身震いし大きなくしゃみをひとつした…。
『いや、ちがう…。この部屋はエアコンのせいで寒いくらいだ。
暑さで喉が乾くはずはない…。』
突然、窓の外が明るく光り出した。
光は次第に強くなり部屋の中を照らし出した。
私は、あまりのまぶしさに思わず目を閉じた。
数秒後、私が再び目を開けたときは、部屋は再び闇につつまれていた。
ここは、ホテルの8階。
いったい、何の光がこの部屋を照らしたのだろう…。
ふと見た、腕時計の日付は8月6日になっていた。