あれは高校3年の夏の出来事。
ある日受験勉強に疲れてついつい机でうとうとしていると、外から聞こえる虫の音に混じり、子供の泣き叫ぶ声が聞こえてきた。
「幻聴だ。気のせいだ。疲れているんだ」
と自分に言い聞かせ、戦慄する心を落ち着かせようとしたが、その声は収まるばかりか、徐々に大きくなる。
とうとう自分の部屋の窓の前までその声が迫った時、不意にその声が途絶えた。
「やっぱり幻聴やったんや・・・」
と思う間もなく、バンバンと窓を叩く音。
再び恐怖に慄く俺。
再び泣き喚く声があたりにこだまする。
そこで俺の意識は途絶えた。
朝起きると俺は机に座ったまま眠ってしまっていた。
パンツやズボンは失禁してしまいびしょびしょだった。
「夢じゃなかったのか・・・?」
そう思いつつ、日の光を入れるために、カーテンを開けて、再び俺は凍りついた。
窓には無数の真っ赤な手形が張り付いていたのだ。
「ゆゆ・・・夢じゃなかった」
再び失禁して失神した。
あれ以来5年間、俺は毎日この現象に悩まされ続けている。
糸冬