友達から聞いた姉の話なんだが、そいつの姉が渋谷の交差点で信号待ちしてると、向かいの人と目が合った。
七三わけのサラリーマン風な感じの男性が、向かい側の人ごみのなかからこっちを見てた。
他人と目が合うのは、よくあることだし瞬間的に目をそらして気にもとめてなかった。
しばらくして信号が青に変わったとき、向こうから渡って来るその人と、また目が合った。
今度はずっとこっちを見つめてる。
「なんだこの人?あたしの顔になんかついてんのかな。」
姉は霊感が強いほうで、よく街中を歩いていてもソレ系のモノを貰ってしまうらしく、よく同じように霊感が強い人から呼び止められることがしばしばあった。
その日も、なんだか体が重くて調子が悪かったらしい。
「また貰っちゃったのかな。あの男の人にも見えるんだろな。」
そう思ってその男とすれ違ったとき、後ろの袖をぐっと掴まれた。
「ちょっとあんた!何てモノ見てるの!やめなさい!」
初老のおばあちゃんが、凄い形相で袖を掴んでた。
「振り返っちゃダメ!付いてこられるから。」
「え?」
とっさにそんなことを言われたので、姉はつい振り返ってしまったそうだ。
男とまた目が合った。
ちょうど反対側の歩道へ渡り終えるところだった。
体と足は、向こうの歩道へ向かって歩いている。
顔がこちらを向いていた。
ちょうど首だけが、体と関係なく姉を追って回転していた感じ。
氷みたいに無表情だった顔が、ゆっくり笑いかけ、体がゆっくりと姉の方向へ回転する。
その瞬間、全速力でその場を離れた。
そのほかにも、そいつの姉はいろいろオカ体験してるっぽい。