S県K市に住む田中家は親子孫三代が住む一家で現代には珍しく、嫁と姑の間も仲良くまた旦那である隆も都市銀行に勤めるエリートであり、順風満帆な幸せな生活を送っていました。
ただそんな田中家にも悩みの種がありました。
それは息子であり、五歳になる博史が生まれつき病弱であることでした。
先日も体調を崩し肺炎となってから今日まで 闘病生活を送っていました。
医師の話では直に良くなるとの事でしたが病状は回復せず、意識を失い危篤となってしまいました。
父である隆は医師に対し、憤慨しましたがどうしようもありません。
隆は藁をもすがる思いで神社や寺を歩き回っては、博史を助けてくださいと願をかけていったのでした。
すると隆の願いが通じたのか、博史は意識を取り戻しみるみるうちに回復したのでありました。
医師はたいそう驚き、現代医学では考えられない事だと言っていました。
博史は意識を失っていたとき、不思議な夢を見たといいます。
博史は真っ暗な闇の空間にいて、何時間も何時間も歩き続け、疲れて歩みを辞めようとした時、不思議な丸い光を見たといいます。
そしてその光に近づき、手に取った瞬間意識を取り戻したそうです。
この博史の話に対して、医師はもちろん隆でさえ子供の戯言と言って相手にしませんでした。
しかし博史が不思議な力を持ったのもこの時からでした。
妙な予言をするようになったのです。
最初はたわいもないことから始まりました。
まあ例えば、今日の野球は5-2で巨人が勝つとかおじさんが3時20分に家にくるとかそんな感じでした。
ですから家族のものも単なるまぐれか、偶然だろという事で気にもとめませんでした。
しかし博史の予言が段々と不気味なものになっていくのでした。
博史「6月30日におじいちゃんが車に轢かれる夢を見たんだ。おじいちゃん気をつけてね!」
博史の予言に対して、家族のものは笑って聞き流していましたが今回は縁起のない事であったのでたいそうしかりつけました。
しかし博史は食い下がりません。
博史「僕はおじいちゃんが好きだから、どうしても気をつけてもらいたいの。おじいちゃん助けたいだけなのに!」
再度怒られたのは言うまでもありませんでした。
しかし博史の言うとおり、おじいちゃんは6月30日に車に轢かれ亡くなってしまいました。
これで終わらず博史の不吉な予言は続きます。
こんどは、おばあちゃんが9月12日に、お母さんが10月5日に死ぬんだというのです。
そして博史の予言通り二人はその日に死んでしまいます。
残った父である隆は悲しみよりも前に恐怖を覚えました。
次はきっと自分の番に違いないと。
そして一月たったあと、博史が再度予言をしてきました。
「お父さんは12月13日に火事で死んじゃうから火に気をつけてね!」
隆は恐怖を感じました。12月1日をもって銀行を退職し、1日2箱吸ってた煙草も辞め、一日家に篭もり、ガス栓を完全に閉め、ブレーカーも落とし絶対に火事が起こらないようにしました。
そして運命の12月13日を迎えました。
隆の恐怖はピークをとなります。
そこで隆は一計を案じその日は河原で過ごすことに決めました。
万が一の場合川に飛び込めばよいと考えたからです。
しかし隆の心配もむなしく、隆の身には何もおきませんでした。
隆は日付が変わるのを待って家に戻りました。
そうすると驚いた事に隣の家が燃えているではありませんか!
きいたところによると12月13日に隣のA宅が火事となりその家のご主人が亡くなったとの事です。
以後博史が予言をすることはなくなりました。