テケテケ

テケテケ 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

私は所謂「見える人」だ。そうは言っても「見える」「会話する」以外に特別な何かはできないが。

私が初めて幽霊とちゃんと喋った、小学校6年生ころの話。
大抵の学校にはあろうかと思う。学校の七不思議。
うちの学校に怪談が七つもあるのか私は知らなかったが。
私が知る話は2つ。体育館の脇にあるトイレで出るという 赤いちゃんちゃんこ。
もう1つは通学路にある地下道に現れる テケテケだ。

この2つが全国的かどうかわからないので、軽く説明するが 赤いちゃんちゃんこ とはトイレの個室で用を足していると、どこからともなく声がする。
赤いちゃんちゃんこいらんかね?いると答えるまで執拗に問うてくる。
観念して「いる」と答えれば血達磨にされるという恐ろしい話である。

テケテケ。
上半身しかない人型のお化けで、手で走って追いかけてくる。
捕まれば自分がテケテケにされる。
下半身をもがれるわけだ。
どちらもピュアな学童を恐怖に貶めるには十分な話だった。

いつからだったかテケテケが出たという話が広まりだし、それは僅か数ヶ月で学校中を席巻してコミュニティーは騒然となった。
足に自信のある者はこぞって捲いてやると息巻いた。
私も逃げ切れる自信があった。
誰よりも早く自信を確信に変えたくて、下校時はいつも件の地下道を通るようにしていた。
そんな私の後ろをYはいつも怯えて歩く。

息が白く、空が澄むようになってしばらく。
地下道の蛍光灯に蜘蛛の空き家が並ぶ季節。
相変わらず地下道を行く私たちの耳に何かを引き摺るような音が届いた。
車の音がやんでいる。
町の喧騒がどこかへ消え、静寂が耳に痛い。
不思議な感覚だった。が、恐怖心は無い。
Yは落ち着かない表情で、見るともなく辺りをキョロキョロ伺っている。
ずずっと音のする方を探る。
どこだろうか。上だ。
天井と壁の境にそいつは居た。
胸くそが悪くなる。

「テケテケ」は確かに上半身だけのお化けだ。へその辺りから下が無い。
無いが、下半身のあった痕跡は有る。
現代風のTシャツはボロボロで、身体から赤黒い線状のものが数本ぶらぶらとだらしなく垂れている。
すぐにでも吐いてしまいそうだった。
Yの口からは美しい放物線を描き給食と思われるモノが噴き出していた。
私以外にも見えているのかと少し驚いて考える。
逃げるか。
ここまでの動きを見る限り追いつかれるとは思えない。
しかしここには、もはや立つ事すらままならないYが居る。
しゃがれた声が聞こえた。
誰かの名前を呼んでいる。
聞いた事の無い名だった。

テケテケは潰れた目でこちらをじっと見つめ、誰のものかわからない名を呟いている。
私は私たちの名を告げ、そんな者は知らないと答えた。
Yはアホ面を私に向ける。

「2年生の女の子だ」

震える声で私にそう伝えたYが私の袖を掴み走り出した。
勢いにまけて、重心が後ろに崩れ、何とかバランスをとろうと足を踏み出す。
そのままYに連れられ地下道から走り出てしまった。
私たちが地下道から出る刹那、彼女はしゃがれた声で再び名前を呼んでいた。

地下道の上には幹線道路が通っていて、近くの横断歩道で事故があった事は学校中の誰もが知っている。
Yによると2年生の女の子がその被害者らしい。
女の子は転校してしまったが、元気でやっていると担任の先生が教えてくれた。
母親はどうしたか私が聞くと困ったような顔をしてから元気だよと大人の嘘をついた。
確信を得た私は、Yを連れて地下道へ行き彼女の出現を待った。
我が子を探すテケテケに、その子は無事だと伝えたかった。
小学生なりの正義感だったのだろう。

ひっきりなしに走り去る車の音が煩い。
日が沈み、月の時間。星空が高く冬の静寂が時折顔を出す。
ランドセルが押された。
Yが帰ろうと呟く。
去り際、地下道全体に向かってあの子は無事だと叫んだ。
しんとした音が応えるだけだった。

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