壁のシミ

壁のシミ 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

GWに帰省した時にうちの母(50代)から聞いた話が怖かった。
母は秋田県の人で、若いころはレディースみたいなのに入ってたりしたらしい。
もう30年以上前、その仲間と一緒に、あちこちに肝試し行ってたんだと。
秋田県の花岡事件があった場所が当時の流行りだったそうで、そこに行った時の話。

現地に着いたのは真夜中だったそうなんだけど、そこはいわゆる廃墟で、スーパーとか映画館?もそのまま。
街全体が形そのままに廃墟になってたって。
奥に進むと、コンクリで作られた馬鹿でかい団地みたいな建物とかもあったそうだ。

今で言うDQNな人たちだったらしく、車で進む⇒面白そうなものがあれば降りる⇒ギャーギャー騒ぎながら見て回る⇒飽きたら車へみたいな感じで寄り道しながら進んだらしい。

雑草がたくさん生えてて、声がすごくよく響いてやまびこ状態だったそう。
その廃墟団地に大声で話しかけると、死者が返事をする・・・
みたいな噂があったので試したけど返事はなかったらしい。
見上げるコンクリの四角いカタマリに無数の窓枠の黒い空洞を見て、「あっちに人影見えた気がする!」とか言いながら楽しんだそうだ。

ちなみに最終目的地は廃墟でなく、その奥の温泉。
それぐらいの年代のやんちゃな人たちはみんな知ってるコースで、花岡の廃墟から更に進むと温泉があり、そこの壁には女性の形のシミがあるという噂。

廃墟だけで帰ってくるのはビビリ、温泉まで見に言ったらまあまあ、入浴までしたら神!みたいな妙な格付けもあって、母たちは入浴する気満々でお風呂セット持参してたらしい。
すごくわかりづらい場所だったけど、でも温泉はあったんだって。
天然の水場とかではなくて、一応ちゃんと人の手で作られた入浴施設。

ボロボロのほったて小屋みたいなのがあって、引き戸は壊れてるのか外して立てかけてあって、入浴料が書かれた錆びたバケツが裸電球と一緒に天井からぶら下がってるっていう、母ちゃん曰く風情溢れすぎる作りだったとか。
その奥に4人ぐらいが入れるぐらいの浴槽がある感じ(露天ではない)だったらしい。
ちなみに混浴なのか、お風呂はひとつしかなかったって。

コンクリートで固められた壁には確かに、人間ぐらいの大きさのシミがあったらしい。
でも、言うほど人間の形か?って思ったって。
遊びに行ったみんな(全員女性)で、これが人間の形って言ったやつが一番ビビリだよねとか笑ってたんだけど、その中でも一番気が強い人が、お湯をバサッ!とそのシミにぶっかけたらしい。

祟られるんじゃないの~とか盛り上がりつつも入浴を終えて服着てたら、1人がシャンプーか何かを浴槽のフチに置きっぱだった事に気付き、もう一度浴槽側の方に行ったんだって。
それでシミをみたら、さっきと明らかに形が違う。
他のメンバーを呼んで一緒に見たけど、形が変わっている。
さっきぶっかけたお湯の形とかとは全然関係なく違ったらしい。

なんとなくみんな気味が悪くなって、温泉からすぐにでて車に乗り込んだって。
来る時はあんなに騒いでたのに、みんな一言もしゃべらず無言で、寄り道もせずに車に乗ってたらしい。
廃墟の団地の所を通った時、車の窓越しにもわかるぐらい大きく叫ぶ声が聞こえたんだって。
え?何か聞こえない?って運転手が減速したんだけど
(有名なスポットだから他の人がいるのかと思ったらしい)
他の子が「いいから急いで帰りたい!腹減ったし!」って言って、普段ならそこで冷やかしが入るんだけど誰も冷やかさず、速度を戻してそのまま地元へ一直線。

途中でエンスト起こしたり、道迷いそうになったり、走ってる途中にエンジン?からガガガッて音がしたりしつつも、みんな最低限のことしかしゃべらずにまっすぐ帰ったって。

その後メンバーの家で酒盛りしながら感想を言い合いながら、徐々に普段のテンションを取り戻してたらしいんだけど、当然最後の謎の叫び声の話になって

「お前びびってたんだろ、腹が減ったとかウソだろ」

って一人が冷やかしてたら

「あの声、やまびこになってなかった。
自分達の時はちょっと声はるだけでめちゃめちゃ響いてたのに」

って言って、みんなそこでまた無言になったそう。

話はこれで終わり。
あんまり怖い話とかしない母なんでなおさら怖かった。

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