間違い電話

間違い電話 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

学生時代、私は北陸のとある大学に通っていました。
仕送りはしてもらってましたが、充分とは言えずバイトの毎日でした。
雪国ということもあり、学生とは言えども車は必要不可欠でしたが、貧乏学生の私にとっては、なかなか手に入れることができず、夢の中古車購入に向け、毎月少しづつですが貯金をしていました。

ある冬の日、肩に雪をつもらせバイト先から徒歩にて帰宅し、留守番電話を確認すると1件のメッセージがありました。
母親からかなと思いながら、何気なく再生すると、

『△△さんですか? お世話になります。○○自動車です。
お預かりしている×××(自動車名)ですが、車検が終わってますので、明日にでもお越しください』

とのメッセージでした。
△△は間違いなく私の苗字ですが、○○自動車なんて聞いたこともない会社です。
そして×××は、当時私が最も欲しかった車の車種名でした。

そのメッセージを聞いた翌日の午後から帰省を予定しており、1週間ほど部屋を留守にするつもりだったので、みも知らぬ同姓の△△さんのことが気になり、電話帳で○○自動車の電話番号を調べ、電話をかけ、昨晩留守番電話にメッセージを頂いていたのだが、電話番号が違っていることを伝えた。
すると、北陸のおじさんという感じのボソボソ声の男性が、

『そうですか。失礼しました。連絡してくれてありがとうございます。
念のため、電話番号確認させてもらっていいですか?07××-××-0832じゃないですか?』

その電話番号は、確かに当時の私の部屋の電話番号でした。
ですが、私ではないということを伝え電話を切りました。

そして、そんなことがあったことも忘れ数年が経ちました。
学生生活にも慣れ、サークルの仲間とも楽しく毎日を過ごしていました。

そんなある日、よくしてくれていた先輩が突然留学するということになり、使っていた車を譲ってやるよと言ってくれました。
その車は、なんと×××(自動車名)でした。
車検がきれるからという理由で、ほぼタダ同然で譲ってもらい、憧れの×××を憧れの先輩から譲っていただいたということが嬉しく、喜びいさんで同級生に自慢していました。

ですが、車は手に入れたものの、1ヵ月後には車検を受けなければいけません。
同級生に相談すると、車検は店によって高かったり安かったりするとのこと。
どうしたものかとバイト先の店長に相談したところ、「知り合いの会社教えてやるよ」と言ってくれ、地元出身の店長は顔も広く、「自分が電話しておいてやるから心配するな」と言ってくれ、安心してお願いしました。

店長に紹介してもらったのは、○○自動車。
ですがこのときは、以前に間違い電話を受けた会社だとは全く気づきませんでした。

早速電話をし、その翌日に車を預けに行きました。
ボソボソと話す男性に何故か懐かしさを感じながら、「貧乏学生なので、できるだけ安くお願いします」と言ったところ、『□□(店長の苗字)さんから聞いてる。任せておいて』と言ってくれました。
人との出会いの素晴らしさを感じ、とても嬉しくなったことを覚えています。

翌週の水曜日には終わると聞いていたので、楽しみに待っていました。
・・・が、その日になっても連絡はありません。
気になりながら、約束の日の翌日に電話してみました。
すると・・・ボソボソ声の男性が、

『○○さん?・・・○○さん、ご兄弟いらっしゃる?
昨日の夜、留守番電話にメッセージを入れさせてもらったんですが、先ほど、○○さんから、車検なんて出してないと連絡を受けて、困ってたんですよ。
電話番号も確認したんですが、間違ってなくって・・・』

そうです。
私は、○○自動車のボソボソ声の男性と、今日の会話を数年前にすでに済ませていたのです。
もちろん、当時の私には心当たりのない話だったのです。
驚きのあまり、その電話を無意識に切ってしまいました。
数年前の記憶が、その時すごくリアルに感じました。

気持ちを落ち着かせてから、数分後にもう一度電話をし、
「PHSの電波が悪くって切れてしまったようです。すいません」
と思いつきで詫びを入れ、その後すぐに車を取りにいきました。

代金を納めるときの、ボソボソ声の男性の不思議そうな表情は、今でも忘れることはできません。
いったい何だったのでしょうか・・・

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