あまり鮮明な記憶じゃないんだが。
今住んでいるアパートに引っ越す前ボロいマンションに住んでいたんだが、帰宅したら自宅のドアに竹馬が立て掛けられていた。
当時俺は高校生だったから竹馬乗るような年齢じゃないし、当然趣味でもない。
ましてや弟がいるわけでもない。
おかしいな、と思いつつもドアを見てたら、隙間から鍵がかかってないのが見えた。
普段なら鍵の閉め忘れかと思うけど、竹馬を加えただけで一気に異様な光景になるわけね、すごく印象的だった。
丸くて握って回すタイプのドアノブじゃなくてL字形の取手タイプだったから恐る恐る竹馬を引っかけて、勢いよく「バーン!」と開けたわけ。
でも勢いよく飛び込む勇気は無かったからそのまま開きっぱのドアの横で聞き耳立ててたのね。
玄関の正面にすら立つこと出来なかったから部屋の中は見えなかったんだけど、やっぱり何かいるみたいでゴトッて音がしたのも覚えてる。
うわぁ何これ何これと思いつつ、とりあえず警察にとポケットまさぐって携帯出そうとしてたら中から子供が駄々をこねるみたいな声で、
「やぁぁだぁぁぁぁああああ!」
って聞こえた。
空き巣とか強盗とか竹馬の理由とか考えてる余裕もなく全力でダッシュして階段降りて、踊り場のあたりで携帯引っ張り出してコールしようとしたのよ。
そしたら受話器からだか後ろからだか、よくわからないんだけど同じくらいの音量で
また
「やぁぁだぁぁぁぁああああ!」
って。
腰抜けてがくがくになりながら人のいるとこ求めて駅前まで逃げていった。
ってとこまでしか覚えてないんだよね、その後のこともさっぱり。