2人乗り

2人乗り 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

これは私の大学時代の友人から聞いた話です。

その友人は社会人になってから初詣へ行かなくなっていたそうですが、去年の正月はあまりにも暇すぎて神社に行ったのだそうです。
本当は家族皆で行けたらよかったのですが、親は仕事の骨休め中、帰省した姉弟も家でダラダラしたいということで、1人神社に向かいました。
自宅から神社はバイクで40分ほどの距離で、それほど長旅ではありません。

何度か行ったことがある場所ですし地元なので、行きはスムーズに神社へ到着します。
ところが無事に初詣が終わる頃には参拝客も増えており、さあ帰ろうとする頃にはかなりの混雑に。
思っていた以上の人混みに、友人は考えつく裏道を駆使して時短しようと試みます。
そして大通りから脇道に進路を切り替えようとした所、警察官のネズミ捕りから笛の音が鳴り響きました。

この時、友人はまさか自分に向かって笛を鳴らしているとは思わず直進し続けたそうですが、笛の音が段々大きくなっていたことで自分が何か違反したらしいことに気づきます。
ところが交通ルールは守っていたし、道路が混雑している影響でスピードを出すことも出来ない。
違反の心当たりも無く引き留められた友人は不機嫌に

「なんなんですか?」

とつっかかり気味に警察官へ尋ねます。
すると警官は

「そのバイクでは2人乗りが危険ってことわかってますよね?あれ…あなた今2人乗りしてましたよね?」

と、意味の分からない事を言っています。

友人は1人で参拝に来たし、とても2人乗りは出来ない小さなバイクに乗っていました。

「いや、ずっと1人で乗っていますけど。」

即座に否定します。
すると警官は

「今、あなた確かに2人乗りしてたんですよ。あなたの後ろにコート着た女の人が座ってたんですが…おかしいな。」

警官も自分で何を言っているのか、理解出来ていない様子です。
どこにもそんな女性がいない状況である事は、友人も警官も目前で確認できます。
結局、その友人は身体が大きかったので2人分いたように警官が見間違えたのだろう、ということで謝罪して解放されました。

その出来事から数日経ち、異変が起きます。
神社で買ってきた御札やお守りが紛失したり、飾ってあった破魔矢が落ちて破損する出来事がありました。
友人の身にも、バイクで走行中車に追突されそうになったり、職場で扱っている什器が倒れて下敷きになるギリギリで回避したりと、危険な場面があったのだそうです。
あまりに続くトラブルから、友人は警察があの時言っていた女の人の存在を意識せずにはいられなかったと言います。

それから友人は、神社でお祓いをしようと思って何度も足を運びます。
すると何回もお祓いを受ける友人に異変を感じたのか、何度目かのお祓いの時、神主さんから「どうされたのですか?」と声をかけられました。

友人は隠すことなく初詣の出来事を話すると、神主さんから

「たまたま通りすがった霊があなたに憑りついている。」

と言われ、ゾッとしたそうです。

「こうした霊はしばしば現れ、居心地がいい人を見つけては憑りつくのですが、一定時間経過したり飽きたりすると霊の方から自然に離れていく。」
のだとか。

悪い霊ではないとのことですが、友人の身にトラブルが起きている事からお祓いは受けた方が良いということで神主さんから懇意にしてもらい、今では無事に生活しています。

ネズミ捕りの警察官の「2人乗りをしている」という言葉は、あながち間違いではなかった、という事なのかもしれません。

★この話の怖さはどうでした?
  • 全然怖くない
  • まぁまぁ怖い
  • 怖い
  • 超絶怖い!
  • 怖くないが面白い