私の実家で『呪いのキューピー人形』と呼ばれているものを、私は結婚後に旦那との新居に持って来ていた。
・・・が、『呪い』と言っても冗談半分で言っているだけで。
その人形を、私の結婚に合わせて実家の掃除をしていた時に発見した。
元は両親がまだ付き合っている頃に、キューピーに似ていると言われる母に父が理想の服をお手製で作ったものを着せてプレゼントしただけのもの。
それが5体あり、ドレスは私が小学校の時にピアノの発表会で着たのに似ていて、着物は父が母の振り袖姿を見ているにも関わらず似てないものを作り、なぜか私が着た振り袖に似ていた。
そんなわけで5体とも私の着ていた服に似ていて、しかも服を選んだ私はその存在を知らなかったから「呪いなんて~」と笑っていたけれど・・・。
ただそれが面白かったのか、母から5体のキューピー人形を譲られて、仕方なしに新居の食器棚の空いているスペースに飾っていた。
しかし、それがある日に無くなっていることに気付いた。
色々と記憶を辿ると、怪しいのは旦那の同僚二人を家族含めて招待した時しかないと思った。
一応両親にこの事を話してみたら、「まさかあのキューピーを盗むなんて」と笑い、「どうせ要らないからほっとけ」、「人を呼ぶ時は気を付けろ」と言われて終わった。
旦那とも今回の事は同僚に問いたださないけれど、「もう呼ばない」で話はまとまった。
それからしばらくして、旦那が無傷のキューピー3体と壊れた1体とを持って帰宅した。
要は、犯人はやはり旦那の同僚のうちの一人の奥さんだった。
私の手伝いで食器棚を見た時に、可愛いと思って盗んだそうだ。
盗んだ人形を家に持って帰った後、夫である旦那の同僚には「私から貰った」と言ってトイレに飾っていた。
しばらくして、うち1体の足が割れて倒れていたので捨てた。
それから数日後に幼稚園児の息子さんが足を捻挫した。
別の1体の頭にヒビ割れを見つけた日には、同僚が仕事中に頭を怪我して数針を縫った。
ここで「少し気持ち悪いね」と話していたら、トイレに行った時にまた別の1体がトイレの中に水没していた。
さすがに同僚が、「これが現実になったら笑えない。私さんにおかしいと言おう」と奥さんに提案したところ、奥さんは盗みを告白する。
次の日、同僚が旦那にお金と共に謝罪し、旦那が4体のキューピー人形を持って帰ってきたわけだ。
このキューピー人形はもう30年近くあるものなので、劣化で割れてもおかしくないと思うけれど、さすがに私も気持ち悪くなって実家に返した。
両親は人形の服だけを脱がせ、本体はお寺に持って行った。
ただの偶然だろうけれど、「呪いって~」と笑っていただけに怖かった。
ただ、こんな経験をした同僚の奥さんが、盗みを一生やめる事ができればいいなと思う。
ちなみに、水没したキューピー人形も戻ってきたけれど、まだ濡れた状態で返ってきたからゲンナリした。
その子は、手袋をしてちゃんと綺麗に洗ってあげてから供養した。
頭にヒビが入った子も、横から見れば割れているけれど正面からは普通だったので、「よく気が付いたな」という感じだった。
そして父は、まだ私は妊娠もしていないのに、「私に子供が産まれたら新たな呪いキューピー人形を作る」と意気込んでいる。