風鈴

風鈴 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

風鈴集めが趣味の友人がいた。

大学を留年するほどバイトをしながら金を稼いで、食うものも食わずに風鈴を買い集めては嬉々としてコレクションを私に披露していた。

やれこれは珍しいトルコで作られた風鈴だ、とか、これはスルメイカで出来た風鈴だとか、風鈴について説明する友人はいつも楽しそうだった。

確かに綺麗に色づけされた風鈴や涼やかな音色には心惹かれるものもあったが冬でもお構い無しに風鈴を飾り、風鈴について語り続ける友人には私も多少辟易していた。

しかし、そんな不健康な生活を続けていたせいか、3回生の夏休みに下宿先のへやで心筋梗塞を起こして友人は倒れ、帰らぬ人となった。

程なくして、友人の田舎から年老いた両親がやってきて、友人の死後の処理を進めていた。
私は数少ない友達の一人と言うことで友人の両親に頼まれて部屋の整理を手伝うことになった。

久しぶりに入る友人の部屋はあいも変わらず風鈴だらけで、窓を開けて風を招き入れると暑苦しくなるほどの風鈴の音色が鳴り響いた。

そんな中で、膨大な数の風鈴とほとんど必要最低限のそれ以外の荷物を片付け終え、ダンボールに詰め終わった。

しかし、

「ちりーん、ちりーん。」

とまだ部屋の中から風鈴の音がする。

片付け忘れた風鈴があるのかと思い私は

「ちりーん、ちりーん。」

と鳴る風鈴の音を頼りに部屋の中を探す。

どうやら、その音は押入れの中からしているようだった。
風の無い押し入れの中で風鈴が鳴るものかといぶかしがりながらも、先ほど片付けたはずの押入れの戸を開けるとそこに音の原因はあった。

こぶし大ほどの見知らぬ壮年男性の生首が押入れの天井に吊るされていて、それが

「ちりーん、ちりーん。」

と口でしゃべっていたのだった。

生首の下には墨で簡単な体が書かれた短冊が吊るされていた。
私が呆然と眺めているのをお構い無しにその生首は目をきょろきょろさせながら

「ちりーん、ちりーん。」

と繰り返していた。

私は友人の両親から、部屋の片付けの手間賃としてその生首風鈴を貰い受けた。
しかし、生首風鈴は吊るさなくても気まぐれに

「ちりーん。ちりーん。」

とうるさいので結局処分することにした。
そして先月生首風鈴をコレクターに高値で売ることができ、そのお金で省エネタイプの新しいクーラーを買うことが出来た。

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