あなたも待ってるの?

あなたも待ってるの? 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

5年ぐらい前の話だけど。
肌寒くなってきたその日、横浜の、駅前のデパートの前で友達と待ち合わせしていた。
珍しく友達が遅れたが、そこは暇な学生のこと、ショーウインドウを眺めたり、人ごみを眺めたりして、のんびり待っていた。
自分の他にも待ち合わせらしい人が何人かいた。

すると、1人のおばさんが、どこからともなく近寄ってきた。
黄色っぽいカーディガンか何かだったと思う。
膝丈のスカートで、今から思えばだけど、「街中にしては、ちょっと・・・?」と思うような服装だった。

と言っても、極端に変でも汚いわけでもなくごく普通なんだけど、絵に描いたようなおばさんという髪型、ファッションで、近所のスーパーなら違和感を感じないような。
生活感あふれるような。

大きな駅前で、少しおしゃれした人が多い中では、なんとなく浮いていた。

「あなたも待ってるの?私も待ってるのよ。」

田舎から上京して間もなかった私は、怪しさに気付かなかった。
「ああ、都会にもこういうおばさん、いるんだ」と思った。
むしろ、少しホッとしたような。

「はい、友達を待ってるんですが。」

「あなたも待ってるの?私も待ってるのよ。ずっと待ってるんだけど・・・
遅いわねえ。」

「はあ。」

そこまで来てもまだ、「話好きな人なんだな。」ぐらいに思っていた。
しかし、2、3度同じことを言うと、おばさんはスッと向こうの方へ行く。
とことこ歩いて行ったかと思うと、また戻ってきて、

「あなたも待ってるの?私も待ってるのよ。あなたも待ってるんでしょう?
もう、本当にねえ・・・遅いわねえ、待ってるのに。」

だんだん、私も「おかしい」と気付き始めた。
すると、今度は、他の人にも(おそらく同じことを)話しかけているのに気付く。

「・・・の?私も・・・よ。・・・・ねえ。」

繰り返す。繰り返す。逃げられると、隣の人へ行く。
おばさんに話しかけられた他の人は、最初は応じるが、しつこくなってくると、移動したりしている。

またおばさんが戻ってきた。

「あなたも待ってるの?私も待ってるのよ。ずっと待ってるのにねえ。
遅いわねえ・・・。」

おばさんは、誰を待っていたんだろう。

ちょうど夕暮れ時で、逆光にオレンジ色に染まったおばさんの笑顔、愛想のいい笑顔・・・忘れられない。
熱心に話しかけてくる、その笑顔のわりには一度も私と目が合わず、私の向こうを見るような目つきだったことも、今思い出すとほんのり怖い。

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