綺麗過ぎる夜景

綺麗過ぎる夜景 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

これは私が某大学に通っていた学生の頃の話です。
大学の近くで一人暮らしをしていた私は、学生のくせに外車を保有して、正直かなりやんちゃをしていました。

付き合っている彼女はいなかったのですが、1人気になっている女の子がいて、何とかものにしようとデートに誘いました。
快くデートの約束を貰い「どこに行こうか~」なんて話をして彼女が行きたいといった所は、山の中ですが夜景が非常に綺麗に見えるという、ちょっと有名な場所でした。
綺麗な夜景で女の子と2人きり。そうなったらファーストキスを願うのは男の性と言えるでしょう。
私はウキウキしながら当日を迎えました。

少し日が暮れた辺りで、彼女と合流した私は車に軽快な音楽を流しながら現場へ向かいました。
N地域の中心地からG方面へと車を走らせ、しばらくは国道で行き交う車も多かったのですが、山の中に差し掛かってくるにつれ車通りも少なくなってきます。
国道何号線か覚えていませんが、道路沿いにはお店もなく街灯もまばらな片側1車線の道を走り抜けます。
もうすっかり日も暮れて、ヘッドライトを消してしまえば真っ暗な状態でした。
そんな周囲とは真逆に、車内では彼女との会話が最高潮に盛り上がります。

ふと気づくとルームミラーに光が反射していて、どうやら後ろに車がきているようでした。
普通の事ではありましたが、辺りは暗闇で誰一人いません。そんな中で後ろから照らされるヘッドライトの明かりは、私たち以外にも近くに人がいるということでなんとなく安心する気持ちにさせてくれていました。
ところが突然、その明かりが消えました。

「おかしいな?」
道は1本で脇道などありません。
彼女にも後ろをついてきていた車がいなくなったことを話し、どこいったんだろうね、なんて会話をしますが、テンションは高い状態なので気にせず気軽に考えていました。
会話も流石に尽き始め、沈黙が多くなるとなんとなく不安な気持ちが芽生えてきます。
何せ辺りは漆黒の闇です。

「そろそろ右に入れる道が出てくるから、そこを入れば目的地だね!」
彼女はまるで怖さを振りほどくように、明るく会話してくれます。
そしてついにその道を発見し、国道を右折しました。
今度は街灯も無くなり、アスファルト舗装も途中で終わってデコボコ道に来てしまいました。
一度車を停めて、彼女と「どうする?」と話しました。
先程までのテンションはどこへやら、私も彼女も今では恐怖心に包まれています。
ですが、折角ここまで来たんだしとりあえず行ってみようということになり、その場に車を置いて歩いて夜景が見るというスポットまで向かいました。

正直、「こんなところに夜景が綺麗に見える場所なんてあるのか?」と思いましたが、歩き始めて数分するとそのスポットが現れました。
確かに夜景は抜群に綺麗です。
ですが綺麗過ぎてゾッとすると言いますか、その綺麗さはもはやロマンティックな雰囲気よりも恐怖を増幅するばかりで、すぐにでも帰りたい気分でした。
彼女も同じ思いだったようで、夜景を一瞬見ただけで私達は車へ戻ることにしました。

ところが、来た道を戻ってもなかなか車にたどり着けません。
おかしい…と思いながら進んでいくも行き止まりになってしまいました。
しかもその正面にはお地蔵様が…。
パニックになりつつある彼女をなんとか支えながら必死に道を戻り、周りを見渡したところ車がありました。
すぐさま車に乗り込み、勢いよく戻ります。

街灯のある国道に出るまでは私も必死で、彼女も沈黙したまま震えているようでした。
なんとか明かりのある道まで出た所で、彼女から
「なぜか左目から涙が出てきて止まらないんだけど。」
と言われました。
見てみると、確かに左目だけから涙が出てきているのです。

とにかくその場から立ち去りたい思いで、よりスピードを上げ進んでいきました。
徐々にすれ違う車が出てきて、店舗等も見えてくると彼女の涙も止まったため、お互いそのまま帰宅することにしました。
彼女を口説き、あわよくば甘い思い出も作ろうと思っていたデートはこうして終わりました。

そして次の日、友人にその出来事を話すると衝撃的な事実を聞きました。
なんとその場所は心霊スポットとしてもかなり有名な場所らしく、遊びで行ってはいけない場所だったようです。
きっとそのスポットが、浮かれて来た私たちを不快だと認定したのでしょう。

彼女とはその後うまくいきませんでしたが、今でもその夜景のゾッとするような綺麗さが強く脳裏に残っています。

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