超神水

216:名無しのオカルト 2014/07/13(日) 01:51:11.12 ID: ID:IAfzA6mt

小学生の頃、近所の駄菓子屋に摩訶不思議なドリンクが売られていた
そのドリンクは瓶に入ってて、瓶の表面には黒いマジックで【スポーツドリンク】とだけ書いてあった
色は無色透明で味はシソっぽい感じだったと思う
多分有名メーカーが製造したドリンクではなくて、どっかの誰かさんが手作りしたドリンクなんだと俺らは言い合っていた

それを飲むと何故か身体がカーッと熱くなって、そこら中を走り回りたくなる衝動にかられる不思議なドリンクだった

俺らの間ではそのドリンクの事を【超神水】と呼んでいた

今思うとかなり怪しいドリンクなのだが、値段は缶ジュースの半分くらいだったので金が無い時は皆よく飲んでいた
一時期俺らの間で超神水はブームになったが、やっぱりシソっぽいの味が子供のお口に合わなかったようで、
次第に缶ジュースや長い棒のジュース(凍らして真ん中でパキッと割るやつ)に戻っていった

でもただ1人だけ超神水を好んで飲み続ける奴がいたんだ
そいつはイイヤツなんだけど運動神経ゼロで、体育の成績はいつも1や2ばかり貰うような奴だった
『お前そのドリンク不味くね?身体もなんか熱くなるし、スゲー怪しいから飲まない方がいいよ』
と俺らが言ってもそいつは聞く耳を持たず飲み続けた

それから1年後、俺らは六年生
俺らはスポ小に入ってたんだけど、そいつは学年で一番運動神経が良くなり、バスケで4番でキャプテンになった
そいつは『超神水を飲み続けたから、俺は運動神経が良くなった』と我々に言った
俺らは馬鹿だったから、そいつが言った事を神の言葉の様に信じて超神水を再び飲む様になった
超神水ブームの再来だ

明日につづく



234:名無しのオカルト 2014/07/14(月) 23:23:52.51 ID: ID:67I3lKm5

キャプテンはこの1年間、超神水について独自に研究していたらしく、俺らに超神水の正しい飲み方を指導してくれた
原液のまま飲み続けると身体の調子がおかしくなるので、水で薄めて飲むのが正しい飲み方なのだそうだ
キャプテンの1年間の研究によると、超神水1に対して水3くらいで飲むのがベストらしかった
これならシソっぽい味も上手い具合に薄まって、俺らでも飲み続けられる

あと超神水を飲むタイミングも教えてくれた
運動する一時間前くらいに飲むと一番効果的らしい
キャプテンが言うには、超神水を飲んだ直後は身体が興奮状態になり身体能力が1.5倍になっているそうだ
ただ感情をコントロールするのが非常に難しく、無駄にあちこち走り周りたくなるそうだ
そう言えば俺ら超神水を飲んだ直後はハイな状態になって無駄にあちこち走り回っていたなとその時思い出していた
1時間後なら精神状態が落ち着いてきて元に戻って超神水の効果も無くなったんだなと一見思うが、
超神水の1.5倍パワーはまだ身体の中に残っていて、その効果は約3時間持続するそうだ
毎日飲み続ければ続けるほどその持続時間は長くなり、やがてキャプテンの様に運動神経抜群の人間に生まれ変われると言うのだ

キャプテンは身体能力が1.5倍上がると言ってたけど、それは盛りすぎだとみんなで笑った
でも超神水の効果は確かにあって、飲み続けると身体能力がアップしていくのが目に見えてわかった
六年生でスポ小バスケに入ってたのは12人で、超神水を飲んでたのは俺を含めて8人だったけど、
個人差は有るものの飲んでる奴と飲んでない奴との身体能力の差はグングン広がっていった
スタメンの奴は全員超神水を愛飲してる奴だけだった
休日は県内のバスケ強い学校とよく練習試合してたんだけど、俺らは一度も負けないくらい強くなった
それもこれも超神水のお陰で、スポ小の練習前や試合前には俺らはいつも超神水を飲んでいた
夏の地区大会では当然のように優勝し、近々行われる県大会の日に向けて俺らは猛練習していた
その時俺らの目はすでに全国大会に向いていた



県大会の1週間前、キャプテンが亡くなった
晩飯食った後に突然家を飛び出して、家から20km離れた踏切で電車に跳ねられたらしい
目撃者の話によると、奇声をあげながら全力で走ってきて、そのまま踏切を飛び越えて電車に突っ込んでいったらしかった

俺らはみな落ち込んだ
大切な親友を突然失った悲しみもあったが、せっかく全国の舞台が見えてきたというのにキャプテンがいなくなってはチームの士気が下がってしまう
キャプテンが俺らを引っ張ってくれたから地区大会も優勝出来たし、県大会も余裕で勝ち上がって全国に行けると思っていた
俺らは超神水を飲んでたとはいえ、その期間は短くてキャプテンの実力にはまだまだ及ばないヒヨッ子ばかりだったのだ
保護者、学校、コーチの間で何だかんだ話し合いがあった様だが、俺らは県大会に出場出来ることになった
俺らはキャプテンがいなくなって不安だったが、『俺らには超神水という御守りが付いているじゃないか!
キャプテンの為にも絶対県大会で優勝して、全国大会に行ってやる!』と、俺らの闘争心はメラメラと燃え上がった

県大会当日、試合開始約1時間の前の控室、俺らは円陣を組んでマイ水筒に入れた超神水を天に掲げキャプテンに黙祷した
超神水飲まない派の奴や4年5年の奴も当然輪の中に加わり黙祷した
その後俺らはマイ水筒の超神水を静かに飲んだ
全員キャプテンの事を思い出しているのだろう、目にいっぱいの涙を浮かべていた
声には出さずとも絶対全国大会に行ってやるという決意がひしひしと伝わってきた

静かな控室、突然超神水を飲んだ奴の1人が白目をむいてぶっ倒れた
控室が急に騒がしくなる、連鎖するように別の奴が突然奇声をあげながら控室を飛び出していく、また別の奴は糞尿垂れ流しながら同じ所をぐるぐる走り回っている
あまりに異常な事態に保護者が集まってきて、控室は一時パニック状態になった
俺の身体も急に熱くなって、目の前がオレンジ色になって意識が無くなったのでその後何が起こったのか俺にはわからないし知ってても言えないだろう

俺は気付いたら自宅のベッドの上で寝ていた
俺らの全国大会出場の夢は潰えてしまったのだ

超神水の噂はずっと前から保護者の間で知られていた事らしいが、子供の遊びだと思って誰も超神水の事を調査しなかった
駄菓子は暫くして潰れた



236:名無しのオカルト 2014/07/15(火) 00:09:13.90 ID: ID:WmB9+mwc

>>234
駄菓子が潰れたのが怖かった

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