長袖の下

小学校の時に転校してきた奴で、少し変わった奴がいた。

(実話なので少しだけ変えてあるけど)

家は、やや貧乏そうで、親父さんがいないみたいだった。
お袋さんは二、三回見たことがあるけど、
優しそうな人で、そんなに不幸そうではなくて、普通に明るい奴だった。
でも変わってるのは、そいつがどんな真夏でも、

絶対に長袖を着つづけていた事だった。

寒がりって訳ではなかった。
夏休み前とか、長袖シャツに半ズボンで学校に来てたし。
あと、プールの授業にも絶対出なかった。
なにか、体にコンプレックスが、あるのかな?って、ようやく気付いて来た頃。
クラスの、悪ガキ達の間で、そいつをよくからかうようになった。
その長袖シャツを剥ぎ取ろうと、みんなでからかったんだ。

ある日、そいつが無性に怒り出して暴れて、そいつの指が俺の目に入った。
俺は涙がボロボロッと出てきて、他の奴らはそれに感化されてカンシャクを起こして、数人で本気になってそいつの服を剥ぎ取った。

そうしたら、そいつの右腕にヘンな物が……

うまれてきてくれてありがとう? だいすきなわたしのあかちゃんマーくん?
ままはとってもうれしいです? いいこにそだってね? ママより?

と、すこし歪んだ刺青が施されていた。
お袋さんの、お手製だったのかな。
そいつは、その後しばらくしてまた転校してしまった。
それから一回も会ってないけど、今はどこにいるんだろう?
今そいつも、俺と同い年の二十五歳か……

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