盲目の男

第2次世界大戦直後、ドイツのベルリンでは物資の供給不足で多くの人が空腹に苦しんでいた。

これは、当時の人々が噂していた話。

ある女性が、人混みの中で杖をついて歩く盲目の男に声をかけた。

「何か私に手伝えることはありませんか?」

「では…メモに書いてある住所へ封筒を届けてくれませんか?」

盲目の男が指定した住所は彼女の帰宅途中だったので、快く引き受けることにした。

女性が封筒をバッグの中へしまい、他にも何か頼みごとはないか聞こうと顔をあげると、そこに男の姿はなかった。

あたりを見回すと、さっきまで持っていた杖を使わず、足早に人混みの中を通り過ぎていく男の後ろ姿が…

彼女は封筒を届けずに警察へ向かい、男から教えられた住所のことを伝えた。

すぐに警察が住所の建物に踏み込むと、そこには新鮮な肉が大量に保管され、作業をしていた人達は一斉に逃げ出した。

男が女性に届けるよう頼んだ封筒の中には、こんなメモが入れられていた。

「これが本日の最終出荷だ」

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