当時、俺がまだ高校生くらいの頃の話。
俺の住んでいた家はかなり古い借家で、自分の部屋にあてがわれた部屋は外からでも直接出入り自由な離れになってた。
そんな理由から当然溜まり場と化すわけで、気の知れた奴ら同士、明け方までダラダラやってる毎日だった。
その溜まり場だった俺の部屋ってのがちょっと変わった作りで、押入れが壁に組み込まれてなくて、なんと部屋に飛び出してる。しかも宙に吊ってあるようになってて、人が床にベタ座りした時の頭の高さまで、下に空間が空いているわけ。
その狭いスペースは、ダチ同士では結構人気があったりして、w わざわざそこに背中丸めて座る奴も多かったが、布団を敷きっ放しだったこともあって、まあフツーに部屋の所有者である俺の指定席になってた。
その日は珍しく、訪問者は友達一人。そいつも毎日の事なんで飽きたのかえらく早い時間に帰っていった。
久しぶりに独りの夜だった。元々真っ暗な部屋では寝れない俺は、古い蛍光灯に付いてるオレンジ色の豆電球を点け、色々と物思いにふけっていたが、知らぬ間に布団も掛けず寝てしまった。
夜中の2時を少し過ぎたくらいだったと思う。横を向いて寝ていると、すぐ目の前に時計があるんでいつも無意識に目がいく。
夏だったのにものすごい寒くて目が覚めた。
ボーっとして、掛け布団まさぐってみたが見つからず、ともかく寒くて膝をかかえるように丸まって寝てたんだが、とても窮屈で足の伸ばした。
足の裏にはっきりと、感触があった。
と、ほぼ同時に、反射的にその方向を見た。
足元に人がいた。
体育座りして、俺に対して横向いて、人がいる。
俺の伸ばした足は、そいつの太ももあたりにあたったらしい。
頭を坊主にした、薄汚いランニングシャツ、半ズボンの格好をした、小学生くらいの男の子。
俺は、ギューッと顔の頬に鳥肌がたって、あまりに怖くて吐き気がした。
豆電球が点いてても、ちょうど吊ってある押入れが光を遮り、首から上が暗すぎて見えない。
ていうか、豆電球しか点いてないあの明るさが、余計に恐ろしくて、怖くて、それとこれだけテンパると、かえって目をそらすことができない。
そしたらそいつは首から上を前に、要は押入れの下から豆電球の明かりが当たる場所に、
にゅうっと顔を出した。
こっちを見た。
目は完全にすわってんのに、口だけ思いっきり笑った口になった。
ブツブツ喋ってるが、何を言ってるのか聞こえない。
それはもう動かしてる本人も意識できないほど、ゆっくりと首を動かし、 顔の向きを変え、目をそらそうとした。
俺はここからの瞬間が一番怖かった。
足首をつかまれた。
玉が本当に縮み上がった。呼吸を整えようと思ってもできない。ビビりまくっていることが、それに伝わってしまいそうで、俺は必死で正気を保とうとした。
それから何時間とか、いつ寝たとか、(もしかして気を失ったのかもしれないがw)全く記憶にない。
ただただ必死で、あんだけ寒かったのに汗びっしょりで、外が明るくなるまで!って、ひたすら耐えた。