15年くらい前、私は中学で演劇部の部長やってました。
発表会でビデオを撮ったんです。
当時のビデオカメラですから映りはあまり良くなくて、出演者の姿がぼんやり映る程度しか撮影することは出来ませんでした。
発表会が終わって、みんなでビデオを見ることにしました。
始まって10分くらいだったと思います。
「人数おかしくないか?」
って誰かが言いました。
数えてみると、確かに、出演者の人数が一人多いんです。
映りが悪いので、顔どころか衣装も判別しにくくて、余計な一人がどの人物なのかわからなかったんですが、間違いなく、6人しか居ないはずの場面で7人映っていました。
そうとう練習したし、出番を間違えるなんてありえないことだし、現に間違って出た役者は居なかったので、みんな不気味がってしまって、鑑賞会は中止になりました。
ビデオテープはしばらく部室にありましたが、誰も触ろうとしないで放置されてるうちにどこかへなくなってしまいました。
卒業後、私たちはそれぞれの進路へ進んで、そんなビデオテープのこともほとんど忘れていたのですが、去年の暮れに、副部長だった子が亡くなり、告別式で私たちは久々に集まることになりました。
死因をはっきり教えてもらえず、自殺ではないか、という無責任な噂がでていました。
明るかった性格の副部長でしたが、いつからか急に塞ぎ込むようになり、卒業後は全く音沙汰が無くなっていました。
精神病院に通院してるらしい、なんていう噂もありました。
その子の母親が、私たちのところにビデオテープを持ってきました。
どうやら副部長がテープを持って帰っていたらしいのです。
はっきりとは覚えていないのですが、そういえば彼女が変わり始めたのはちょうどビデオテープが紛失した頃だった気がします。
副部長の母親は部長だった私に渡すべきだと思ったみたいです。
他の誰も持ち帰りたがらなかったし、捨ててしまうのは不謹慎過ぎです。
仕方がありませんから持って帰ってきました。
まだ見ていません。
ビデオデッキの上に置きっぱなしです。
どうしても見ることができません。
そのビデオテープはβテープなんです。