引越しを翌日に控え、俺は一人部屋の片づけをしていた。
押入れの戸袋にしまい込んだままになっている箱を取り出し、それを脇に押しやると、お札が貼ってあるのを発見した。
この部屋に越してから四年、全然気づかなかった。
上半身を戸袋の中に突っ込んだまま、苦しい体勢で箱を移動していたが、その姿勢のまま、俺はお札を剥がしてみた。
なぜそんな事をしたか自分でも良く分からないが、まあ明日の朝には部屋を出る身、たいして深い考えはなかったと思う。
お札の跡には何かがセロテープで貼り付けてあった。
俺は少し体を乗り出して、それが何か確認しようとした。
そこには髪の毛の束が貼ってあった。
げっ、と思った瞬間だった。
いきなり足首を誰かに掴まれた。
部屋には俺一人のはず。
頭はパニックで真っ白。
声も出なかった。
俺は引きずり落とされるようにして、畳の床に落ちた。
ほんとに一瞬のことで、何が何だか分からなかったが、部屋には誰もいなかった。
俺はそこで初めて恐怖のあまり声を上げた。
そして、転がるようにして部屋を出た。
結局、翌朝までファミレスに避難した。