『年神様』って知ってる?
大晦日の晩に、「ほとほと、ことこと」と家々の戸を叩いて回るといわれている神様。
私は中1の時、その経験をした。
東京都中野区の祖父母の家。
大晦日の晩で、その年は初詣にも行かず、祖父母と親たちは『行く年 来る年』を見てすぐに寝てしまった。
昔風の家で、大きな掘りごたつに弟(小3)と同じ一辺に2人で入って、寝室に行くのもめんどくさくてぼんやりしてた。
私の右側に、門にはいって来た人を玄関まで行かなくても見られるように窓がある。
そこを誰かが規則正しく「コンコン、コンコン」と叩く。
握りこぶしを作ると人差し指と中指の骨が出っ張る、そこでたたくらしい硬い音。
でも、『あっ、人間じゃないっ』とっさに思った。
弟が怖がらないよう知らんふりをしていたんだけど、やっぱり気づいてしまって、怖そうに擦り寄ってくる。
意を決して立ち上がり、思い切り窓を開けた。
誰もいなかった。
冬の真夜中の冷たくて重い外気がどんより流れ込んでくるだけ。
門は通りより少し高く、玄関はさらに数段の階段を上がるから、居間の位置も高くて通りを見渡せるけど、誰もいない。
玄関の鍵も門の鍵もピッシリ閉まってる。
門には屋根があり、周りの塀も高い。
居間の戸を叩くには塀を乗り越えなければならないし、人間なら「○○さん」と呼びながらたたくはず。
無言でたたき続けるはずがないし、あの時感じた『人間じゃない』感じもすごくリアルだった。
数年後、民俗学か何かの本で「ほとほと、ことこと」と呼ばれている年神様のことを読んで、やっと納得がいったよ。