携帯で友達と話してたんだけど、急にプチッと切れちゃったんだよね。
あれ?電波届いてないのかなーと思ったけど、普通に外だったし、そりゃあないだろとマーク見ても三本立ってるし。
どっか変なとこでも触ったか?とかあちこち見てみた。
結局なんもなかったから、首をかしげてリダイアルしようと思ったら、逆に着信があった。
番号は友達のだったから、相手からかけなおしてくれたんだな、と。
「おーい、もしもし?なんか切れちゃったみたいなんだけd…」
『お電話代わりました。担当のMと申します』
マジでえっ?てなった。
で、その後すぐに、ああふざけてんのかなと思った。
声もそうだったし、何より番号同じだったから、間違い電話はねーだろと。
「…ああMさんですか。この前はどうもお世話になりました。○○商事の●●です」
ふざけて言ってみたりした。Hって誰だよとか思いながら。
当然だけど、名前も会社名も全部嘘。
『……●●さんで宜しいのですね。私はHです』
ここで喋り方が変わった。
声は変わって無いんだけど、機械っぽくなる。
何だコイツ、変なの。
俺はちょっとした変化に首を傾げながら、自分の用件を伝えた。
「今どこにいるんだよ。俺もう待ち合わせ場所きてんだけど?」
『何の待ち合わせをしているのですか』
「映画だろ。お前が誘ったんじゃねーかwww」
『…●●さん。私は今日行けそうにありません』
低い声だった。けど、それは紛れもなく友達の声だった。
「あ、そうなの?……とりあえず演技みたいなのもういいだろ」
呼吸音が聞こえた。
自分を冷静にしようとして、深呼吸してるみたいなスススウウウハアアアア。
コイツ深呼吸長いなーと思うのと同時に、だんだん怖くなってくる。
『行けません、行けません、行けません、行けません、行けません、行けません』
俺が本気で怖くなったのはこの辺り。狂気的なものを感じた。
何かがおかしい。
「お前なんかおかしいぞ。受付かと思ったら次は異常者か?」
そう言うと、友達の呟きがぴたりと止まった。
また深呼吸をしてる。
「まあ、行けないのは分かったから……。また今度一緒に行こう」
じゃあな、と締めて電話をきろうと思ったら、
『エールキキイイイイイイイイタイ』
と意味の分かんない音がして、相手から切れた。
しかも、その時の通話の切れ方がなんか普通じゃなくて、
普通はプッで感じで切れるけど、この時はブチッ!って切れ方だった。
おいマジかよって、現実に感じられないほど怖かった。
特に最後の音が。
あれって多分、動物の鳴き声みたいなものじゃないかと思うんだよね。
少なくとも友達の声じゃなかった。
映画見る気にもならなくて速攻家に帰った。
怖くて気付いてなかったんだけど、二件メール受信してた。
一通目は友達からで、『ごめん映画いけなくなった。何か通話切れたね。誰かと通話中?』って内容で、
二通目は見た事のないアドレスで、『いっしょにいきましょうね』とだけ書かれてた。
一通目は、最初の通話が急に切れて、少し後に送られてきたもので、
二通目は、二度目の通話が終わった直後に送られてきたメールだった。
その矛盾に気が付いた時、俺は全身に鳥肌が立った。
だれだ、おまえは。