Y市S町に、ヤクザハウスっていう廃屋があった。
住んでいたヤクザが殺され、幽霊が出るという噂。
当時小学5年の俺と子分のA、Bで探検に行った。
ヤクザハウスは2階建の立派な日本家屋だった。
けれど、今は荒れ果ててひどい有様。
ゴミやジュースの缶が散乱していた。
埃っぽい。
畳の染みを見て、「ここで撃たれたんや!」脳天気。
1階をグルッと見て、3人で2階へ。
階段の途中で、突然、下からの物音が聞こえた。
バン!ドンドンドンドンドンドンドン!
ドアの開く音がして、荒っぽい足音が玄関の方へ。
「誰かおる!」
俺ら、ビビったけど下へ。
さっきは無かった油っぽい足跡が、玄関まで続いてる。
それを辿って、開いているドアを見つけた。
階段の裏側。見逃してた。
「A、覗いてこい。」
そーっと覗いたAが立ち竦む。
「大丈夫か~」
慌てて、2人で助けに行った。友情。
Aの所へ。
俺とBも部屋の中を見た。呆然。
無数の写真。
部屋にはそれしか無い。
家具もない。
写真は、壁や窓、ドアの裏にもベタベタ貼られている。
風景。建物。男や女。車。血塗れヤクザ。AとBと俺。
「気色悪ぅ~」
Bが呟いた。
俺はガクガクブルブル。
俺たちの写真?
いつの間に撮った?
いつ現像した?