緩くカーブした道

緩くカーブした道 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

父と友人が若い頃の話。

山と言っても地元の人が山菜採りに行く様なあまり高くもなく、半日もあれば登って帰って来れそうな所らしい。
目的は遺跡かなにかで、それを見た後
「この山を通って帰ろうか」
と言う話になったらしい。

あっという間に頂上を越え、下りに入る。
日が暮れて、空がオレンジ色に染まっている。
両側が林になった、ほぼ平坦な道に入った。
急に薄暗くなったが、緩くカーブした道の前方には林の途切れる部分が見えていた。
2人は今日見た遺跡の話などをしながら、ぶらぶら歩いていた。
最初に思ったよりも道が長い様に感じたが、話が盛り上がっていたので気にしなかった。

ふと、友人が「なんか、あんま進んでへん気するわぁ」と言った。
父も「思ったより長い道だなあ」と返した。
振り返ると、夕日の射す、林の入り口が見える。
前には、同じ様に夕日に照らされる道が見えた。

「なんか薄暗いし、気味悪いわ」
「まあ、後少しだから」

2人は再び歩き出した。

が、なかなか出口にたどり着かない。

「なぁ、ホンマ気味悪いで。走ろうや」

友人が言った。
父と友人は走り出した。
全力疾走に近かった。

「あかん、全然縮まらへん」
「怖い怖い怖い!!」

友人は叫びながら走っていた。
父も真剣に走ったそうだ。

途中で友人がずっこけた。
木の葉で滑ったらしい。

「もー知らんわぁ!どーにでもせーやー!」

友人はそう叫ぶと、座ったまま煙草に火を点けた。

「お前も休めー。こんなん、バカにされとるんや」

2人で煙草を吸いながら、父は入り口と出口を何度も見直した。

「どう見たって5分もあれば出れると思ったんだがなあ」
「知らん知らん!俺等バカにされとんねんて、放っとけ」

友人は煙草を吸い終えると立ち上がった。

「さあ行こかー」

2人で再び歩きはじめた。
するとあっさり、出口にたどり着いた。

「ほらみぃや、バカにしとんねんで。気持ち悪いわぁ」

振り返ってみても、そこには緩くカーブした、短い林があるだけ。
そのまま父と友人は悪態をつきながら、無事に山を下りたそうだ。

よくある話なんですけど、記憶に残っていたので書いてみました。
似た様な体験を自分もしたし、友人からも聞いた事があります。
共通点は「煙草」「緩いカーブ」「ほかに人が居ない」です。
こう言う場所って、いろんな所にあるんでしょうね。

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