祟り神

祟り神 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

一説によると霊感は生まれた時からある人、二十歳になるまである人、二十歳を境に発生する人、ずっと無い人に分かれると聞いた事があります。

どうやら俺は二十歳過ぎてから見えるタイプだったらしい。
厳密に言うと二十歳になる半年前から何やら感じるようになった。
当時…といっても半年程前だがその頃は20歳なったばっかで、霊感が少しある事が誇らしく有名なスポットに行ってはそれなりの心霊体験をして楽しんでいた。

ある時ひょんな事で知った木津川ホテル(通称)に行こうとバイト仲間合計五人で出かけた。
その場所はメンバーの中で俺しか知らず肝心の俺も大体の場所しか知らなかった。
だがその場のノリで何とかなるだろうと夜中大雨の中車で出かけた。
その日は凄い雨だった。
ワイパーをフルで動かしても夜だったこともあり殆ど前が見えなかった。
山道だったしぶっちゃけいつ事故ってもおかしくない状況だった。

近付くにつれ心霊スポット特有のあの空気を感じた…
内心(まだ結構距離あるのに…これは当たりかな)と少し先の心霊スポットに期待した。
車では現地まで行けず5~10分程歩かないといけなかった。
川沿いの細い道をあるかないといけないのだが…
雨のせいで五センチほどその小道は浸かっていた(というか川みたいに凄い勢いで水が流れていた)。
ただただ俺は怖かった。
かなりのビビリだが後輩の手前そんな素振り見せるわけにゃあいかなかった。

そして問題のホテルについた。
しかし俺はそのホテルを見上げた瞬間(ヤバ過ぎる)と感じテキトーな事を言って誰一人中に入らずに帰った。
帰っている車内もずっと誰かに見られている気がした。
帰るとゲージにいるはずの犬が居なかった。
だが眠かったのでそのまま寝てしまった。

その晩妙な夢を見た。
二足歩行の象がいた。体長は三メートル程だった。
その妙ちくりんな象が俺に
「あの犬は帰って来ないよ。あの犬は帰って来ないよ。あの犬は帰って来ないよ。あの犬は帰って来ないよ。あの犬は帰って来ないよ。あの犬は帰って来ないよ。あの犬は帰って来ないよ。」

何度も呟いていた。朝起きると汗だくだった。

妙な胸騒ぎがしてゲージを見に行くとやはりいない。どうやら脱走したらしい。
今まで何度か逃走した事があるボンクラ犬だがいづれも10分程で帰ってきたのに。
我が家の犬は帰ってきませんでした。

それからでしたホントに怖かったのは…
それまでは幽霊は見た事はありましたが全て生前は人間だったものばかりでした。
あんなのは見た事無かった…
犬を探しにチャリで出かけていたら…

「ズザザザザッ」

猫かいや生き物では無い、でも人間の幽霊にしちゃ歪な…
そして感じるヤバさは人のそれとは桁違い。
皆様ジブリの「もののけ姫」はご存じでしょうか
あの作中に出てくる「祟り神」あれが一番近い。
大きさ的には50センチ四方程だった。
かなりコンパクトなサイズだがあれはなんというか…
この世の憎悪とかそういう悪い気の塊のように感じた。
そいつを見るだけで泣きそうになった程だ。(訂正・ちょっぴり泣いてた)

それから一週間そいつは俺を付け回していた。
そいつは出る場所をいとわずバイト中に平気で姿を現した。
しかしシャイなのか姿を見せるのは2・3秒だけですぐに物陰に姿を消した。
だが俺は怖かった。普通の幽霊でも怖いが、あんなものがあるなんて…
俺は毎日毎日悪夢にうなされた。毎日…
そして同時に犬が心配になった。もしあんなやつらに捕まっていたら…
三週間程してようやく悪夢や祟り神が開放された。

何故かは分からん。別に何をしたわけでもない。
後悔なら毎日していたがそんなこと聞き入れてくれるヤツではなさそうだったし。
一月程したら犬が見つかった。
だが親友は言った

「ミルク(うちのワンチャン)はあんたの身代わりになるよ」

うちに帰って来て一週間程でまた犬は行方不明になった。
前回はセキュリティーが甘いため逃げたと思いかなりセキュリティーを上げていたのにいなくなった…
どう考えても人の手を借りねば出れない程にしていたのに…
親友の言葉がよぎった

「ミルクはあんたの身代わりになるよ」

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