これは僕が中学3年の秋に友達と体験した、実話です。
当時一番仲の良かった友達、A君とB君とは常に一緒でした。
そして僕達の共通の趣味といえば、エアガンでした。
その日もいつも通り、学校の終わった後、近所の公園で待ち合わせして遊ぶことになりました。
持ってくる物はエアガン。そしてジュース代程度のお金。
その頃、もっぱら的当てや虫撃ちで楽しんでいた僕達はそろそろ、その遊びに飽きていました。
その日は別の遊び、もちろんエアガンを使った遊びを開発しようという目標がありました。
さっそくA君が提案で、撃ち合いをすると言い出しました。
「危なくねぇ?」B君がちょっと否定しました。
「じゃあ何かあっとや?」すぐにA君が聞き返しました。
「何もねぇ」と、無駄な時間だけが過ぎました。
それから3人で悩んだ挙句、それぞれいろんな場所に空き缶を並べて、いくつ打ち落とせるかやる。
ということになりました。
そして次は、それをやる場所を決めることになりました。
それについては、3人とも思いつく場所があったので、すぐに決まりました。
その場所というのは、昔から有る空き地で、ドラム缶が集められたり、崩れた塀があったりと、天然のアスレチック広場のようになっていました。
ただ、そこには一つ小さな墓石があり、たまに変なのを目撃したとか、何か出るんじゃないかとか、あまりいい噂のない空き地でした。
それでも昼間やるなら別にいいだろうと、誰も止める人はいませんでした。
そして遊ぶ日も、次の土曜日に決まりました。
そして土曜日。
集合場所の公園に3人集まりました。
「持ってきた?」とA君が聞きました。
その日持ってくる物は、エアガン、お金、そして各自空き缶10個。空き缶はゴミ箱にいくらでもあったので、簡単に集められました。
「もち、持ってきた」B君が袋をガラガラ言わせながら空き缶を持ってきました。
3人が持ってきた空き缶を合わせると30個にもなり結構な山になりました。
ここで改めてルールの確認をすると、一人が空き缶10個を隠す。
そして二人はその空き缶を探して、打ち落とす。
というかくれんぼの要素を入れた遊びでした。
「じゃあ、俺が先に隠すなぁ。お前ら見るなよ」
そう言ってA君が空き缶の入った袋を持って、空き地内に入っていきました。
その間、B君と僕は目を閉じていました。
しばらくしてA君が
「オッケ!隠したよ、てか時間決めようぜ」
と言い出し、追加ルールで3分以内に探さなければならない、ということになりました。
それから僕達は交代で空き缶を隠しては撃ち、その日は日が暮れるまで遊びました。
それからその遊びは、しばらく僕達の間で流行り、ほとんどの時間をこの遊びで過ごしました。
何週間かして、A君が学校にある物を持ってきていました。
それは発光塗料でした。塗った場所が、暗いところで緑色に光るという奴でした。
どうしたの、と聞くとA君は
「親父が買ってきたっちゃけど、余ったからもらった」
と言いました。A君のお父さんといえば、昔から日用大工が趣味だったので、納得しました。
それからA君は、到るところに塗料を塗っては、手で暗くして楽しんでいました。
その日もエアガンで遊ぶ約束でした。
するとB君が、その発光塗料を見て
「それ空き缶に塗って、遊ばねぇ?」
と言い出しました。僕もA君も、おもしろそうだったので、すぐに同意しました。
「でも暗い場所じゃねぇと、光らんよ、これ」
A君が言いました。B君が少し悩んで、
「じゃあ・・・夜やろうぜ、夜」
と言いました。親が寝たあとじゃないと出れない、ということで12時集合になりました。
予定は明日、土曜日に決まりました。
そして土曜日。12時。
集合場所の公園にそれぞれ、懐中電灯、エアガン、空き缶10個をもって集まりました。
空き缶にはあらかじめ、A君の発光塗料が丸印で塗られており、不気味に光っていました。
「じゃあやろうぜ!誰が先に隠す?」
A君がはしゃいで言いました。
「俺どっちでもいいよ、A先隠す?」
B君が言いました。僕も賛成しました。
そしてA君が先に空き地に入り、空き缶を隠すことになりました。
秋の夜、本来ならまだ月明かりで明るいはずでしたが、その日は曇ってることもあり、周りはほとんど見えませんでした。
とりあえず僕達は目を閉じて、A君が来るのを待ちました。
そしてすぐにA君が戻ってきました。
「オッケー、探していいよ」
懐中電灯で顔を照らしながらA君が言いました。
「よっしゃ行くか!」
B君と一緒に空き地に入り、光る空き缶を探しました。
「あ、あそこ!」
と言いながらB君が空き缶を見つけて、打ち落としました。
それから順調に空き缶を打ち落としていきました。
僕が隠す順が来て、二人が見つけて撃っていきました。
辺りがかなり暗くなった頃、B君が言いました。
「そろそろ帰らねぇ?」
確かに、そろそろ帰ったほうがいいような雰囲気でした。
十分楽しんだし、今日はこれで帰ろうということになりました。
空き缶は、とりあえず一箇所に集めました。
そして帰ろうとしたとき、
「ちょっと待って、カギがねぇ」
とA君が言いました。
空き地は結構遠い場所にあったため、その日は自転車で来ていました。
「落とした?ポケット入ってねぇの?」
とB君も心配そうに言いました。
自転車にカギ着けたまんまじゃないかと、僕が聞くとA君は走って自転車を見に行きましたが、すぐに戻ってきて
「無かった・・・落としたかもしれん」
と言いました。そして急きょ、A君のカギを探すことになりました。
空き地は広かったので、それぞれ手分けして、懐中電灯の灯りだけを頼りに探しました。
ドラム缶の上、周り、塀の周り、木のした、草むら、砂場、思い当たる場所をそれぞれ探したのですが、結局見つかりませんでした。
「ねぇな」
とB君が呟きました。
「あそこ・・・」
と言いながら、A君が小さな墓石のある茂みに懐中電灯を向けました。
夜は流石に不気味な感じになっていました。
でもカギを探さなければ、自分達も帰れないと思い、3人で、墓石の周りを探すことになりました。
墓石の周りは背の高い草が生えて、探すのも大変でした。
しばらくして、B君がふいに口を開きました。
「なぁ、ここ出るって知ってる?」
「出るって?」
A君が聞き返しました。
「聞いた話だからさ、あんま詳しくないっちゃけど・・・
ここって本当はな、公園が立つ予定だったんだってさ」
「お前、マジこえぇよ」と言いながらも、B君の話に耳を傾けていました。
さらにB君は続けます。
「でもな、工事中に一人子供が入ってきて、生コンクリートの中に落ちたんだってさ」
「助かったの?」A君が聞きました。
「いや・・・確か、誰もそれに気付かないで、そのまま固めたらしい・・・」
「こえぇ・・・」と言いながらもA君は必死でカギを探していました。
もちろん僕もカギを探すのに必死でした。
それでもB君がとどめに言いました。
「その墓石がそうかもな!」と少し脅かす感じで墓石を照らしました。
「もうマジお前、カギ探せって」と、A君が少しキレ気味で言いました。
それよりも、カギを探して、早くこの場を去りたいというような感じでした。
「ん?」とB君が不思議そうに照らした小さな墓石を見ていました。
「どうした?」とA君が聞くと
「俺さ、さっき空き缶隠すとき、ここに来てさ、
1回墓石見たんだけど・・・」
「だから・・・?」とA君が手を止めてB君に聞きました。
「いや・・・何か違うような気がして・・・何だろう」
それからB君はずっと小さな墓石を見ていました。
「気のせいやろ・・・てかカギ探さんと、マジやばい」
A君が我に帰ってまたカギを探し始めました。
と、同時にB君が叫びました。
「ズレてる!」
はぁ?と言った表情で、A君と僕はB君を見ました。
B君は続けます。
「いや・・・さっきはちゃんと真っ直ぐに立ってた・・・
けど、今はちょっと斜めに倒れてる」
「ウソやろ?」
A君も疑うように言いました。そして墓石を見て言いました。
「確かに斜めやけど・・・元からじゃねぇ?」
それにB君が反論しました。
「いや・・・俺さ、墓石の上に缶置こうと思って・・・
一回置いたっちゃけど・・・きれいに乗った」
そう言って、空き缶を持ってくると、墓石の上に乗せようとしました。
「いや、普通に無理やろ」とそれを見ていたA君が言いました。
確かに空き缶は、墓石の上にのることなく、コロンとすぐに落ちました。何度やっても同じでした。
「お前動かしたろ?」とA君がさらに疑って、墓石を動かそうとしました。
ところが墓石はびくともしませんでした。
「やべ・・・マジ早くカギ探そうぜ」とB君が焦りました。
墓石が気になりながらも、必死こいてカギを探しました。
それからどのくらい時間が経ったか分かりませんが、歩いて帰って、また明日探しに来ると、A君が言い出しました。
確かに明るい昼間に探したほうが、見つかりやすいとは思いましたが、歩いて帰るには遠すぎでした。
B君の自転車も僕の自転車も、一人乗り用だったので、A君を乗せることはできませんでした。
「マジで歩いて帰るの?」と、B君が心配して言いましたが、何も言わずにA君は頷きました。
そしてA君は歩いて帰ることになりました。
最後に、また墓石を見ようとB君が言ったので、しょうがなく付き合って、見に行きました。
「え!?」3人でほぼ同時に驚きました。
確かにさっき斜めに倒れていた墓石が、ちゃんと真っ直ぐ立っていたのです。
「うそやろ・・・お前何かした?」
A君がB君に聞きましたが、すぐに答えが返ってきました。
「いや、ずっと一緒にいたし・・・まず無理やろ」
確かに3人でずっと一緒に探していたので、そんなことできなかったし、墓石を動かすこともできないのは、分かっていました。
さらに近づいて墓石の上を良く見てみると「カギ!?」と、A君が言いました。
確かに墓石の上に、A君のカギが乗っていました。
「お前の?」とB君が確かめるように聞きました。
「うん・・・俺の」A君が答えました。
もう一度B君が、墓石を動かそうとしましたが、びくともしませんでした。
「お前らもみたやろ?」と、B君が聞いてきました。
確かにさっきまで墓石は斜に倒れていたのです。
それが今はちゃんと真っ直ぐ立って、しかもA君のカギが乗っていたのです。
途端に僕達は怖くなって、その場を離れました。
すると、後ろの方、墓石がある方からガタッっと音がしました。
「お前ら・・・絶対、後ろ見んなよ・・・」と、B君が言いました。
そしてすぐに自転車のある場所まで走りました。
わーとか、ひゃーとか、何か途中意味の分からないことを叫びながら走ったのを覚えています。
それから何日かしてから、霊感の強い友達にその話をしたとき、その友達はこう言いました。
「あそこには、子供の霊がいる・・・そして、その子供は、ずっと遊び相手を探し続けて、成仏できない
らしい・・・たまに遊びに来る子供を見つけては、持ち物を隠して、困らせる。
それはまだ可愛いからいいけど・・・その子供に本当に好かれると・・・」
それ以上友達は何も言いませんでしたが、僕にはどういうことか良く分かりました。
以上、秋の夜長の体験でした。