地元の心霊トンネル

地元の心霊トンネル 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

先日体験した話。
俺とオカルト好きな友達とその友達の彼女で心霊スポットに行ったんだけど…..
俺の地元だとかなり有名な心霊スポットだ。
もう使われていない、古いトンネルがそのスポットで昔、殺人事件があったらしい。
俺達は友達の軽自動車でそのトンネルに向かった。時間は深夜1時くらいだった気がする。

俺とその友達はオカルト好きで、いろんな心霊スポット巡りをしていたが恐らく霊感とは無縁の人種なのだろう。
幽霊を見た事がなければラップ音も聞いたことがないのでそう思っていた。

「俺達さ、霊感とかないと思うんだ、だからさ最後に○○トンネルに行ってみようぜ、それで見えなきゃ心霊スポット巡りも今回でおしまい」

そういう事を友達が言いだしたのが先日そのトンネルに行ったきっかけだ。
そのトンネルは地元では最怖スポットで、俺達がまだ小さい頃から

「あそこだけは言っちゃだめよ。ついてくるからね」

みたいにまわりの大人達から言われていて、オカルト好きな俺達もさすがに手を出さずにいた。
友達の彼女は所謂、霊感少女。
某SNSのオカルトサークルで知り合ったらしい。
その彼女は俺達がそういう怪しい場所に行く事を嫌っていて、以前何度か誘った事があるがすべて断られた。

「本当にやめてよ、そんなところ行って、もし○○に(友達)憑いてそのまま連れてかえってきたら、あたしなにも言わずに別れるからね」

いつもそう言って断っていた彼女が今回参加する理由は、本当に危ないところだかららしい。
もう使われていないトンネルだがその近くを車で通過するだけで寒気がするのだそうだ。

「これで最後って約束してね!あたしが危ないって言ったらそれ以上は進まないでよ」

トンネルへ向う車内でそう何度も繰り返していた。
わかったよ、と何度も適当に返事をしながら車を運転する友達の隣で、俺はいつもとは違う不安な感じがしていた。
後部座席にいつもはいない霊感のある彼女が座っていたからかもしれない。

トンネルが使われなくなったのはかなり昔なので、トンネルは勿論、そのトンネルに通じている道路も封鎖されている。
今は新しいトンネルが別につくられていて、その新トンネル手前の脇道が旧トンネルにつながっている。
その脇道にたどり着いたときはすでに深夜2時前だった。
俺も友達も初めてその道を通った。
舗装されて綺麗な新トンネルから付近からまだ五分ほどしか走行していないのに。雰囲気が全く違っていた。
辺り一面に木が生い茂っていて、車が一台通るのがやっとくらいの幅の道路だ。
木の枝や葉の間から少しだけ空が見える。
古いアスファルトはひび割れて凹とつがあり、酷く車が揺れる。
それからその道を十五分ほど走ると、前方に鉄門が現れた。道路を塞ぐ大きな門だった。

「ここまできて入れないのかよ、ちょっと降りてみようぜ、ここはまだ大丈夫だろ?」

友達が後部座席の彼女にそう訊くと、

「うん、まだなんにも感じない」

と答えた。
車から、おりてみるとその錆び付いた門が異様に不気味に感じた。
鉄門は太い鎖に南京錠で固定されて外れそうにない。
登るか。友達が呟くように言って俺も賛成した。
友達が、車に積んでいた工具箱からペンチをもってきて鉄門の上の有刺鉄線を切っている間、彼女と少し話しをした。

「本当に大丈夫?なんか口数減ってない?」
「大丈夫!!なんにも感じないし、行こうよ」

少しにやけながらそう言う彼女に少し寒気がした。
そんな場所に「行こう」なんて、彼女の口からはじめて訊いたからだ。

「おい、いいぞ、ほらお前今日はスニーカーで来てよかっただろう?」

と有刺鉄線を切り終えた友達が鉄門の向こう側から彼女に言った。
うん!と彼女は明るく返事をして俺よりも先に門をよじ登り、勢いよく飛び降りた。

着地と同時に「うぅぅ」と唸りだして地面にしゃがみこんだ。
足を痛めたのだろうと思って俺も急いで門を乗り越えた。
大丈夫か?と俺と友達が呼びかけるが返事はなく、唸り続けている。

暫くそのままの状態だったので、もう戻ったほうがいいんじゃない?と俺が言うと同時に彼女が立ち上がり真上を向いて

「ぎゃぁぁぁああ」

と叫びだした。
俺は異様な光景で、頭が混乱していて

「静かにしないと!静かにして!」

と何度も繰り返す。

友達は彼女の肩を両手でおさえて揺さぶりながら、おい!おい!大丈夫か?と話しかける。
彼女は急に叫ぶのをやめると、友達を両手で突き飛ばした、窪んだ道路の水溜りに尻もちをつく。
虚ろな目の彼女が俺と友達を交互に何度か見たあと、おそらくトンネルがあるであろう奥の道にむかって全速力で走り出した。
運動会とか体育の授業の時みたいになりふり構わず振り乱すようにして深い闇の中に消えた。
俺達は暫く硬直していた。水溜りが小さく波打って、友達が震えているのがわかる。

「あいつどうしちゃったの?あんな彼女見るの初めてだよ、どうしちゃったんだよ」
「なにか見ちゃったのかも…..とにかく追いかけないと!」

友達に手を差し伸べながら俺がそう言うと

「駄目だ、立てそうにない、腰やられてる、駄目だぞ、これ以上奥に進むのは嫌だ、もうここに居たくない、絶対嫌だ」

と俺の手を振り払って、いきなり友達が怒鳴りだした。

「お前、なに言ってんの?お前の彼女だろ!!」

俺そう言い終える前に、さっきまで怒鳴っていた友達が急に

「だーめ、だーめ、だーめ、だーめ、だーめ、だーめ、だーめ」

とゆっくりと繰り返し呟きはじめた。
水溜りの水を掌で掬って自分の両腕に擦り込むように塗りつけながら、「だーめ、だーめ」と繰り返す。
俺の瞳を見つめたままで。

俺はその友達が不気味で恐ろしくなり、もういいよ、お前はここで待ってていいから、俺が彼女を連れ戻してくるから。と逃げるようトンネルの方にむかった。
俺もその場所にいたくない、というよりも少しでもはやく友達から離れたかった。
小走りで道を進んで行く、五分か十分かそのまま走るとトンネルの入り口が見えた、なぜかその辺りだけ薄く光が当たっているかのように古臭い石造りの輪郭が際立って見える、夜道に目が慣れたせいかもしれないがわからない。

トンネルの入り口は汚れた背の低いガードレールでバリケードをつくっていただけで簡単に乗り越える事ができたが、内部に一歩入ると足首の近くまで水が溜まっていて、靴の中まで水浸しになってしまった。
俺はジーンズの裾を膝まで折り曲げて携帯のライトで周りを照らしてみることにした。

ライトを付け、辺りを見渡す。
携帯の弱いライトでは自分の周囲2、3メートルを確認するのがやっとだったが、足元の水は奥の方まで溜まっていそうだった。
一週間ほど前から雨の日が続いていたけど、それほどまでの豪雨ではなかったので、どこかから湧いて出た水が溜まっているのだろうと思った。
暗闇の中で一度、彼女の名前を大声で呼んでみたが返事はなく、張りつめた空気を切り裂く自分の声だけが虚しく響いて余計に恐怖が増した。
スニーカーと靴下は水を吸い重く何度も脱げそうになりながら、先を進む。
トンネルは俺が思っていたよりもはるかに長かった。
徒歩ではなく車やバイクで通ったとしても長く感じるだろうと思う。
街灯のないトンネルはまるで未開の洞窟か大きな防空壕みたいで、位置感覚が無く今自分がどの辺りを歩いているのかすら分からない。

この先に彼女がいる。そう俺は確信したのと同時に全身の毛穴が粟立つのがわかった。
彼女の着ていたシャツやスニーカーがちょうど一メートルほど先の水面で揺れていたからだ。
濡れたシャツを手に取って、雑巾のように絞っているときに特徴のある金ボタンを見つけて確信した。
絞ったシャツを片手に進んで行く。
この辺りから携帯の電池が残り少なくなってきたので、ライトを消して待受画面の光で周囲を確認するようにして進む事にした。
暗い、という事に徐々に慣れてきてはいたが、暗闇に目が慣れる事は無く、携帯の弱い光とシャツを握った方の手を前に突き出して周りを確認していた。
そのまま奥へと進んで行くと、
トンッと指先になにか固いものが触れた。

行き止まりだった。
恐らく厚い大きな板かなにかで強引に封鎖してあるようだった。
いないか。流石にこの深い闇の中に光もつけないで、1人でいれるわけがない。
実際のところ俺自身、携帯のライトがこんなに頼もしく思えたのも初めてだったし、誰かが奥でライトを付ければ見逃すはずも無い。
はやく気づいておくんだった…..そう思った。
暫くその場に立っていると、自分がたてた水の音が止んで辺りが一瞬静かになった。
どこかから吹いてくる隙間風の静かな音に混じって、荒い鼻息が近くで聞こえた。
俺は何故かその時、すごく冷静で自分の左側から聞こえるその音の正体を確かめようと思った。
恐怖でどこか麻痺していたんだと思う。
携帯を写真撮影のモードに切り替えてライトを付け、その音の方向を照らした
彼女だった。
上半身は裸で靴下とズボンだけ履いた格好で、トンネルの出口を塞ぐ板になにかを夢中で擦り付けている。
俺はその板をライトで照らしてみた。
口紅だった。赤い口紅。それをクレヨンみたいに使って、なにかグチャグチャな絵?というよりもそれ自体を塗り潰すようにめちゃくちゃに塗っている。
口紅は残りが殆ど無くなっているのに夢中で同じ動きを繰り返す。
俺はそれをやめさせようと、無理矢理その板から彼女を引き離した。
彼女は意外とすんなりとその行為をやめておとなしくなった。

「帰るぞ」と言うと俺が言うと、うん、と言って頷く。
彼女の手を引きながら、急いで元の場所を目指す。
行きよりもはるかに帰りの方がはやく感じた。
トンネルを出る頃には、彼女は元に戻っていて、シャツを着せてあげると、ごめんね、ごめんね、と何度も俺に謝った。
鉄門の場所まで辿り着くと友達がいない。
車もない。彼女が泣き出して、どこに行ったの?!と訊いてきた。俺はとりあえず落ち着かせようと思い、山のふもとのコンビニかもしれない、具合が悪いって言ってたから休んでるように言ったんだよ。
それから車で来た道を徒歩で降りた。コンビニには友達はいなかった。
俺達の異様な雰囲気に気付いたのかコンビニの店員が外にでてきて、駐車場に座っている俺達に「警察呼びましょうか!?」と慌てて話しかけてきた。

俺が大丈夫です、と言うと、店員はあなたには訊いていません!と言ってもう一度、今度は彼女の目の前まできて訊いたが、
彼女も「大丈夫です、タクシーを呼んでもらってもいいですか?」と言った。
タクシーが到着すると、俺達は同乗して、先に彼女を家に送った。
俺と友達は一人暮らしだか彼女は実家に住んでいるので、その家の前でタクシーを止めて、別れた。
車内ではお互いにほぼ無言だった。
翌日、電話に出ない友達が心配になり家に行ってみた。
鍵がかかっていて、駐車場に車はなく帰ってきた形跡はない。
彼女の携帯は電源すら入っていなくて、実家まで訪ねてみたところ、あの日から帰っていないそうだ。
タクシーを降りたあとどこに行ったのだろう。
思い当たる場所はあのトンネルしかないが、もう俺はあの場所へ行く気はない。

これで話は終わりです、長い時間付き合ってくれた皆様ありがとうございました。
現在も二人とは音信不通です。
読みづらい箇所あったと思いますが最後まで読んでくれてありがとう。
少しすっきりしたよ。

★この話の怖さはどうでした?
  • 全然怖くない
  • まぁまぁ怖い
  • 怖い
  • 超絶怖い!
  • 怖くないが面白い