祖母ちゃんが子供だったときの体験談を教えてくれた。
夏休みに田舎に行って遊んでいたら、親におつかいを言いつけられた。
てくてく歩いて河原に出たら、子供がしゃがんで石を手に遊んでいるのを見かけた。
近づいてみたら、鬼の子だった。
頭のてっぺんが禿げているように見えたのが、肉が盛り上がって角になっていたそうだ。
しかし怖さよりも、格好のみすぼらしさに、かわいそうだって思いがわいた。
着ている物が襤褸なんてものじゃなく、ムシロを体に巻き付けているようで、腕も足も垢まみれなんだか、
火傷のような赤汚い色なんだそうだ。
そして、祖母ちゃんが近づいて来たのに気がついたようなんだけど、意地でも見てやるもんか、という感じで顔を上げず、
石を積み上げたり崩したり一人で遊んでいた。
祖母ちゃんも声をかけようか迷ったんだけど、従兄の
「道で猫の死体を見ても、可哀想だなんて思っちゃダメだぞ。ついてきちゃうぞ」
という言葉を思い出し、その場所を立ち去ったんだと。
日にちが経っても忘れられず、お寺のお坊さんにそのことを相談したら、
「そうだよなぁ、ついてこられたら困るよなぁ。
しかしな、仏様なら大丈夫だ。
子鬼だろうが大鬼だろうが、人に悪さをせず、仏様について行ったら極楽に行ける。
人間なら猫の霊でも鬼でも大変だけど、仏様ならどれだけ来ても、ちゃーんと助けてくれる。
その鬼の子が極楽に行けるよう、お祈りしてあげような」
と言ってくれ、五分くらいご祈祷してくれた。
そしてお守りをくれて、
「こんどまた鬼や霊を見ることがあったら、
このお守りを見せて、この仏様のところに行け!って言いなさい。
ちゃんと大声で、はっきりとした声で言うんだ。
そうしたら大丈夫。その鬼もつらい思いから助かるよ」
しかしそれから、そのお守りとかけ声を使うようなことには遭わなかったそうだ。