795 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/02/06 20:57
すいません、ちょっと失礼します。
このスレのことは、大学の友人の洋子(仮名)から教えてもらいました。
っていうか、オカルト板を見るのは、今これがはじめてです。
そしてたぶん、というか絶対、これで最後でもあります。
ほんとうはこのスレだけには関わりたくなかったんですけど、
このカキコだけしておかなくちゃと思ったんです。
ここを見てる人たちのために。
信じてもらえないかもしれませんけど、黙っているのは、やっぱりよくないんじゃないかと思いましたから。
そもそも、わたしが2ちゃんねるを見るようになったのも、洋子の影響です。
彼女に、「面白いから見てみなよ」と何度もすすめられるまでは、
2ちゃんねるは、ひどい荒らしと下品なカキコばかりの掲示板と思っていました。いろんな事件もありましたし。
でも、実際に見てみると、わたしのよく行く少女漫画板なんかはとっても楽しくて、
「なんだ、こんなことなら偏見をもたずに、もっと早く見ればよかった」と思いました。
でも、この前の金曜日。
夕方おそくに洋子から電話がかかってきて、いきなり「2ちゃんねるは、もうやめたほうがいいよ」と言うんです。
あんなに面白がって勧めていたのは自分なのに。
なぜかと不思議に思って聞くと、逆に聞き返されました。
「あなたはいつもどの板のどのスレ見てる?」って。
わたしが、「少女漫画板のスレいくつかと、邦楽板、純愛板とか」と答えると、
なぜか小さくため息をついて、
「本当にそれだけ?なら、よかった。もしもってことがあるし、責任感じてたから」と。
責任とか何とか、それはどういうことかと聞くと、
「とにかく、2ちゃんねるはもうやめたほうがいい」と言うばかり。
それからごちゃごちゃ話をして、「電話じゃなんだから」と、洋子がこのアパートに来ることになったんです。
796 名前:795 投稿日:03/02/06 20:59
わたしは実家の祖母が倒れたというのでしばらく帰省していて、洋子と顔を会わせるのは十日ぶりくらいでした。
ドアの前に立っている彼女は、なんか、すごく雰囲気が違います。
普段はうるさいくらい明るい子なのに、妙に深刻な顔つきなんです。
目のしたにうっすらクマができて、ひどい風邪でもひいたあとって感じ。
とにかく、わたしは彼女を部屋にあげ、コーヒーを出して、
二人でこたつに足を突っ込みながら、向かい合って座りました。
洋子は黙ってコーヒーを半分くらい飲むと、「ネットって怖いよ」とぽつりとつぶやき、
顔をこわばらせたまま話し始めたんです。
洋子の高校時代からの友達で、恵美(仮名)という子がいたんですが、これが「見える人」なんだそうです。
洋子から話は聞いていたけれど、わたしは普段あまりつきあいないし、そんなの信じてなかったし、
どうせちょっとブサイクだからって人の気をひくために、そんなこと言ってるだけじゃないかと思ってました。
実際に、洋子が恵美といても、不思議な体験をしたことはなかったみたいだし。
一回だけ恵美が、わたしのアパートに来たこともあるんですが、
人の部屋に入るなりきょろきょろあちこち見て、「うん、大丈夫」とか小声でつぶやいてて、
変な子だと思ったのをおぼえてます。
797 名前:795 投稿日:03/02/06 21:01
とにかく、その恵美が、一週間ほど前に洋子の部屋に来て泊まったとき、
一緒に2ちゃんねる見てカキコしてたそうなんです。
独身男性板とかでネナベやって煽ったりして、げらげら笑ったりして。
夜中の二時近くになって、もう寝ようかとしてたとき、
恵美が洋子のブックマークのひとつを見て、「何これ?」ってクリックしたんです。
洋子は一瞬、ヤバイと思ったみたいです。
それはオカルト板のスレだったんで、恵美がまた「霊感少女」ぶってウザくなるから。
案の定、恵美の様子が変わって、マジに眉をひそめて、
「なに~~~これ。こんなの見ちゃ駄目だよ~~。
いつも言ってるでしょ、こういう話は、面白半分で読んだりするだけでも良くないんだよ。
このスレ、ブックマークから削除しなよ」
798 名前:795 投稿日:03/02/06 21:02
洋子はオカルト好きだけど、しょせん真剣には信じてないんで、そういう恵美の態度が鼻につくんです。
それに、その時は勝手にブックマーク削除されそうになって、ちょっとむかついて、
「こんなの、どうせみんなネタだし、雰囲気つくって遊んでるだけだからいいじゃん」って、言ったんです。
そしたら、恵美がモニターのスレッドをじっと見て、スクロールさせながら、
「ううん、違うよ。これほんとヤバイ・・・」って言うんです。
ネタとか作った話ばかりに見えるけど、本物もあるって。
ほんとに霊体験した人がカキコしてんのかって、洋子が聞くと、
「うん・・・・それもある。それはまだいいんだけど・・・」
って、恵美が独特の暗い声出して、
「この世の人がカキコしたんじゃないのもある。それがヤバイんだよ・・・」
「うそ。じゃあ、どれがネタで、どれがその『あの世の人からのカキコ』か恵美にはわかるの?」
って、洋子は聞いたんです。
そしたら、恵美が、ずーっとスレを見ていって、
このレスはネタ、これもネタ、これは実体験ぽい、これはネタ・・・ってやりだしたんです。
洋子は正直、「また出たよ、自称霊感少女が」と心の中で思ったんだけれど、
恵美があまりにも真剣にモニター睨んでるんで、ちょっとそれ自体が異様な感じで怖かったそうです。
そして、画面をスクロールしてた恵美が、いきなりあるレスを指差して、
「これは・・・これ書いた人、人間じゃないよ・・・」
799 名前:795 投稿日:03/02/06 21:03
それは、見てみるとすごく短い文章で、恐怖体験をつづったものでした。
「これが?」
洋子はちょっと拍子抜けしたみたいです。
べつに、それが自分が今まで読んだ話のなかでも、飛び抜けて怖いとか、そんなふうに思わなかったので。
むしろ、読み流してたというか、読んだことも忘れてたくらいでした。
よくあるパターンで、夜中に金縛りにあい、目を開けたらそこに髪の長い女の人が立ってた、という話です。
なんか、一気にばからしくなって、洋子はそのままパソコンをスリープさせて、
もう遅いから寝ようと、布団にもぐりこんだんです。
恵美はまだそのときは普通だったそうです。
明かりを消して眠りに落ちてから、まもなく洋子は妙な物音で目覚めました。
となりの布団で、恵美が後ろを向いて寝ながら、うーんうーんって小さくうなってるんです。
すごく苦しそうだったので、
「悪い夢でも見てるのかな?もしかして、寝る前にあんな話になったのが悪かったかも」と思って、
起こしてあげようかどうしようかと、そのまましばらく見てたそうです。
800 名前:795 投稿日:03/02/06 21:04
そしたら、だんだんうなり声がやんで、かわりに寝言を言ったんです。
「どうして・・・」
ぼそりとそう言ったと思ったら、すぐにもういっぺん、
「どうしてわかったの?」
って、とても寝言とは思えない、はっきりとした口調で言ったんです。
まだ向こうを向いているけれど、もう起きたのかなと思って、洋子が、
「何のこと?すごいうなされてたよ」って言ったら、
恵美が突然、布団からむっくりと起きあがったんです。
それ見たとたんに、洋子は背筋がゾッと冷たくなって、
目を開けたまま、その姿勢で身動きできなくなったそうです。
起きあがって座った恵美の後ろ姿は、ざらりと長い黒髪で背中が半分ぐらいまで隠れてたんです。
恵美は、うなじが見えるくらいの茶髪のショートカットのはずなのに。
それで、白い浴衣みたいなものを着ているんです。
確か寝る前に、洋子のヒョウ柄パジャマを貸してあげたはずなのに。
洋子はもう、頭がパニック状態でした。
(これは、恵美じゃない!いやだ、なんで、なんで!!)
801 名前:795 投稿日:03/02/06 21:07
恵美とすりかわったものは、ゆっくりと振り向きました。
見たくないのに、洋子は目をつぶることができないんです。
身体が硬直したままガタガタ震えています。
電灯を消して、部屋は暗いのに、なぜかそれの姿はやけにはっきり見えます。
ゆっくりと振り向いたその顔自体は、恵美の顔でした。
でも、異常に目がつり上がって肌は青ざめ、歪んだ口元は、普段の恵美とはぜんぜん違います。
まるで誰かの顔とミックスされているみたいな、別人が恵美になりすましているような、そんな感じなんです。
抑揚をなくした恵美の声で、「どうしてわかったの・・・」と言うと、冷たくにやっと笑いました。
その瞬間、洋子は気が遠くなったそうです。
はっと目覚めたときには、朝になっていました。
隣の布団には誰もおらず、パジャマだけが脱ぎ捨てられています。
どこにも恵美の姿はありませんでした。
恵美の服もバッグもないので、帰ったのかなと思いました。
でも、一言のことわりもなく帰るなんてヘンだし、
また昨夜の恐怖がよみがえってきて、恵美の携帯にかけてみましたが、圏外でした。
昼過ぎに何度もかけたけれど、ずっと圏外。
夕方。実家に電話したらお母さんがでて、まだ帰ってないとのこと。
ますます怖くなった洋子は、べつの友達に連絡をとって、
その夜から三日ほどは、その子のところに泊めてもらったそうです。
802 名前:795 投稿日:03/02/06 21:08
けっきょく、恵美は家出人として捜索されることになるのですが、いまだに見つかっていないとのことです。
洋子も事情聴取を受けましたが、あの夜のことは、布団に入って寝た、というところまでしか言えません。
朝になったらもういなかった、家出するようなことは言っていなかった、
とくに親しくしている男性もいなかったし、恵美の行きそうな場所に心当たりもない、
と彼女は繰り返したそうです。
四日目に、洋子が自分の部屋に帰ると、勝手にパソコンが立ち上がっていました。
あの夜から、ぜんぜん触っていなかったのに。
恵美と見ていた2ちゃんねるのスレッドが画面には出ています。
「洒落にならないくらい恐い話を集めてみない?」
洋子は何かに憑かれたように、恵美が指差したあのレスを探しました。
でも、どこにもそれらしいものはありませんでした。
話の筋は短くて、はっきり覚えているので、あれば見間違うはずないのです。
何度もスクロールしてみましたが、見あたりません。
もちろん、あぼーんされたレスもなかったのです。
わたしの話はこれだけです。
長文すみませんでした。
洋子はアパートを引っ越しました。パソコンは友達に売ってしまったそうです。