昔から実家のベランダから見える5階建てのくらいのビルがある。
色は深緑で珍しいけどまああんまり目立つビルではない。
そのビルは大きくはないけど都会じゃないので、1キロくらい離れてるけど上半分はよく見える。
で、なぜか小さい窓が一個しかない。四階あたりに一個だけ。
だから何階建てかは正確にはわからない。
初めて見た時の記憶がおぼろげなんだけど残ってて、4,5歳の時、誰かと一緒に外を見てて
その一緒の誰かが、「あれはお化けビルだよ」って俺に教えてくれた。
この記憶には間違いはない。
だから俺は22で地元を離れるまで、ベランダから外を見ると「ああ、あのビル・・・」って
感じで思い出してしまう事がしょっちゅうだった。
で、不思議なことにそのビルのある場所は家からはだいたい解ってて、そこは駅と俺の家の
ちょうど中間くらいだから、もう千回以上通ってる場所のすぐそばなのに、
そのビルを一回も外で見たことがない。というか思い出すことがない。
なぜかきれいさっぱり忘れていて、思い出すのはたいていベランダ。
ベランダで思い出すとすっごい気になって、
「小学校より右でパチンコ屋より左だから、ちょうどあの坂の通りの一本横の小道だな」
って感じで、今度何のビルか絶対突き止めようって思うのに、なぜか忘れてしまう。
と、いうよりその場所は親友の家とかもあって、俺にとっては超地元で庭みたいなもんだから
どこに何があるなんてほとんど完璧に知ってる。
でもそのビルは近くで見たことないんだよ。家からみたら絶対「あそこ」にあるはずなのに!