もう数十年程前の話になるが、私が2~3歳ぐらいの頃だと思うんだけど、母親に連れられてよく近くの公園に行ってたんだ。
そこでいつも会うおばさんが二人いたんだ。
一人はいつも赤いハイヒールを履いて、もう一人はいつも黒いハイヒールを履いていた。
そのおばさんの顔はどうしても思い出せないけど、そのハイヒールを履いた足元だけは鮮明に覚えている。
そのおばさんたちは二人で来るときもあるし、それぞれ一人で来るときもあった。
そのおばさんたちが来るのは、決まって私が砂場で一人で遊んでいるときだった。
母は近くのベンチに座ってよく本を読んでいたと思う。
一人で砂場で遊んでいると、子どもなので、視線の先に赤いハイヒールと黒いハイヒールが見えることがあった。
「おばさんが来た」と思って顔を上げるとそのおばさんたちが来ている。
いつも一言二言話をしていた記憶がある。
それから、しばらくして保育園に通うようになったので私はその公園には行かなくなった。
そのおばさんたちとも会わなくなったんだ。
それから時が過ぎて、大人になった私はふとしたことでそのおばさんのことを思い出したんだ。
母に当時、公園で二人のおばさんがよく来ていて、話をしていたことを言ったけど、母はそんなおばさんは知らないと言った。
いくら特徴を話しても記憶にないらしい。
そういえば、そのおばさんたちはいつも私のところには来るけど、母と話していた記憶はなかった。
そしていつもいつの間にかいなくなっていたことを思い出した。
いま考えるとあの二人のおばさんは誰だったんだろうと思う。