夕方、夕焼けが綺麗な時間帯の商店街を歩いてたんだ。
レンガ貼の通路が夕日に映えてキレイだニャ~なんて、たらたら歩いていたら、前方20メーターぐらい?かな、琥珀色で半透明のヘンなもんが横切った。
男の脚だった。
チノパンで黒いベルトをして靴も履いていて、むっちりと脚の質感はあるものの、上半身が全く無い。
スタスタ歩いてる脚も、向こう側が透けて見えている。
で、そのまま行ってしまったんだけど…。
ほーーーあれが幽霊というものか。と。
なんだかあっけない。
噂によく聞く寒気とか金縛りなどもなく、すーっと行っちまいやがりました。
思うところ、誰かの記憶の残像のようなものが残っていたんでしょうか?
今生きてるのか死んでるのか知らんけど。
そのレンガ貼りの商店街で以前、60過ぎくらいのおばはんがオイオイ泣いてるんだ。
「どうしましたか」
と声をかけたら、
「痛いんですー痛いんですー」
と泣くばかり。
他にも学生風の子と50くらいのおばちゃんが来て、
「大丈夫ですか、転んだんですか?」
と問うのだが、
「痛いんですー痛いんですー」
しか言わない。
「救急車、呼びましょうか?」
と聞いても、「痛いんですー痛いんですー」なので、「救急車呼びますよー」と、携帯で救急車を呼んだ。
待つ間もひたすら「痛いー痛いー」と泣き続けていたその人は、救急車が到着した瞬間、ピタッと泣き止み、
「ええっ、なんですか? 困りますー!」
と、スクッと立ち上がり、オリンピック選手のごとく立派なフォームの猛ダッシュで逃げて行った。
後に残ったわたしら三人、救急車の人に謝る謝る。
更年期障害の情緒不安定ってああいうやつなのかなぁ。なんて。
幽霊よりこっちのが怖い気がした。