白い人達

白い人達 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

それは僕が6歳になった夏の事です
その日は母と2人でご先祖様の墓参りに二人で行きました。
暑さのせいか、お盆だと言うのに僕と母しか人はいません。
とても良い天気でせみのうるさい声と大きな入道雲・・・今でも鮮明に思い出します。

そのトイレは墓地の敷地から少し外れた無縁仏を祭る墓の横にあり、そこにいくと不思議とせみの声も聞こえず、良い天気が嘘のように薄暗い・・・。
(いやだな・・・・怖いなぁ・・・・)
少しの恐怖心を必死で押さえ、さっさとトイレを済ませました。

その時、なぜその窓が気になったのか分かりません。
手を洗う場所に、お墓が見える小さな小窓が付いていました。
何かに取り憑かれた様にトイレにある窓からぼんやりと外を眺めていると、今まで聞こえなかったセミの声が聞こえてきました。
不思議に思いながらセミの声を聞いていると、そのこえはドンドン大きくなります。
背中からはじんわりと冷たい汗が流れ、心臓の音がやけに響くのを体で感じ窓から目をそらそうとするのですが、体が動かず目をそらす事が出来ません。
最初は1匹・・・2匹・・・5匹・・・10匹と大きくなるセミの声・・・・。

ジーワ・ジーワと言う大きなセミの声に混じってざわざわと何かがざわめく声が・・・
(セミだけじゃ・・・ない!!ほかにたくさんの人がいる・・・・!!!!)
それは一瞬の出来事でした。
僕がそう気付いたのと同時に、今まで僕と母しかいなかった墓地にはたくさんの白い人たちであふれかえっていたのです。
その人たちが一斉にこっちを見たのを感じ、僕は転がるようにトイレから抜け出しました。
トイレから出てきた世界は、いつも通りのお墓の風景でした。
セミの声も、白い人もどこにもいません。
待っているのは母だけです。
ズボンをきちんとはかずに呆然と立ちすくむ僕に母が駆け寄り心配そうに衣服を整えます。
その時、母に伝えたかったのですが、ここで言うとさっきの白い人たちが現れそうなので

「母さん、早く帰ろう。」

と泣きながら言いました。

帰り道、電車の中で勇気を出してその事を話すと母は少し困った顔をして

「今日はお盆だから・・・・きっと寂しい人たちが出てきたのね・・」

と呟きました。
それからご先祖様のお墓に行くときは多めに花を持って行き、無縁仏に添えるようになりました。

これが僕が体験した不思議な出来事です、あれは一体何だったんだろう・・・と
白昼夢のようなものではないか・・・と思うときがあります。
でもあのセミの声とざわめき声は20年たった今でも耳に残っているのです。

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