「いきなり右足だけしびれだしたんだよ・・・」 友人Kは語りだした。
「おまえなんでもない?。つーか、あの時何もなかった?」
「いや、別に何も・・・。どうかしたのか?」
10日ほど前、心霊好きの友人がネットで見つけた所謂心霊スポットに、深夜数人で探検という快挙(私に言わせれば暴挙に近い)を成し遂げた。
意気込んだ割にはものの15分ほどで終わりになってしまい、無理やり連れて来られる形になった私もやや拍子抜けの感があったのだが、底の浅い心霊マニアにとっては十分な「探検」だったのだろう。
「建物の中入って、右の廊下を奥まで行って、部屋の中覗いて帰ってきたろ?
廊下の奥から引き返したときだよ。」
友人が見つけてきたスポットは郊外にある廃墟で、この手のものに決まってある暴走族の落書きがほとんどみられない珍しいものだった。
元々は大きなガラスのドアにでもなっていたのだろうと思われる入口から入ると、左右に伸びる廊下。
右に向かった廊下を突き当たりまでたどると、大きな鉄製のドアで行き止まりになり、そこから引き返した。
ただそれだけである。
いくつかある小部屋(?)にも入らなかったし、左に伸びる廊下にも足を踏み入れなかった。
わざわざ数珠まで忍ばせていた私が滑稽に思えた。
これは探検ではなく儀式だったのだ、
「ビビリ屋」でないことを仲間内で確認し合うための・・・。
だから花を手向けた私をからかったりしたのだろう。
「なんかこう、『バチ―ン』て感じで・・・。
一瞬、何か尖った物ででも足刺したのかと思ったら痺れなんだよ。
正座なんかしてなるのと一緒。ただ右足だけ。」
「・・・・・・」
「一瞬で足がしびれたのは初めてだよ、あと、立ったまま足がしびれたものな。
絶対にヤバイと思ったよ、いや、いきなり痺れたのもそうだけどさ、あんとき何か『出た』ら、逃げられないし、おまえら絶対俺を置いてくだろう?必死で付いてったよ」
「・・・・・・」
「俺たちやっぱ祟られたみたいだぞ。
まあ、俺の場合は当日足が痺れただけだったけど、FとMは事故で重態、Hはいきなりぶっ倒れたと思ったら即入院、ICU行きとはな・・・
あそこ行って一週間チョイでこれだからな、マジ、祟りかもな。」
「・・・・・」
「おまえも足しびれるとか、肩が重くなるとかで済んでるのかなと思って声掛けたんだけどまだ何もないようだから気をつけろよ。
ホント足しびれるくらいで済んでよかったよ俺。
ま、そんな暗い顔すんなよ。自分から霊呼んじゃうぜ。」
Kは言いたいことだけを言ってしまうとそそくさと帰っていった。
私はそんなに暗い顔をしていたのだろうか・・・。
私は再びパソコンに向かうと、保存してあるいくつかのメールを見やった。
from:M
to:xxxx
subject:びっくり
おとといの肝試し、戻ろうとする直前足がいきなりしびれだしてビビッた。
それもなぜか右足だけ。
これだけなら不思議でもなんでもないけど、Fに話たらFもだって。
これにはびっくりだったよ。写真何か写ってるかも。
ほんじゃ、また。
・・・バイク直ったよ~ン・・・
from:H
to:xxxx
subject:霊障・・・かも
調子悪いです。頭痛です。飲み杉かもです。
この間は言わなかったけど、実は変なことがありました。
Fが「戻ろうか」という少し前、突然右足だけしびれだして歩くのがやっとになってました。
外に出たとたんに直ったんでまず霊障間違いなしです。
なんかヤバイ気がするので写真現像出してないです。
奴らには内緒ね
う~頭いて。