早く見付けて

早く見付けて 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

ここに引っ越してきて5年になるが未だに隣近所の人との付き合いはあまりない。
バス停に向かって歩く途中、最初の曲がり角の家の奥さんが、いつものように家の前を掃除している。
オレは軽く会釈をして通り過ぎる。

「あの奥さん、いつもこの時間に掃除しているな。
それにしても顔色が悪い、どこか悪いんじゃないだろうか。」

毎朝、顔を合わすのだが挨拶以外、口をきいたことはなかった。

ある日の晩、俺はタクシーで帰宅した。
すると、家に着く最後の曲がり角、あの家の前で例の奥さんが掃除をしている。

「夜中の十二時・・・、おかしいな」

オレはタクシーの運転手に

「今の奥さん、なんでこんな夜中に掃除なんかしてるんだろうね」

と、話した。
だが、運転手は

「えっ?今、人なんていました?」

なぜか運転手は、絶対に人はいなかったと言いはった。

翌日。
家を出ると、曲がり角の家の前にパトカーが2台停まっている。
あの奥さんの家だ。
何かあったのだろうか?
気にはなったが、会社があるためオレは急ぎ足でバス停に向かった。

その日はなぜか一日中そのことが気になっていた。
オレは家に帰るなり妻に聞いてみた。

「今朝、角の家にパトカーが停まってたけど何かあったのか?」
「自殺だって。
あそこ、未亡人の奥さんが一人で住んでたんだけど、隣の家から変な匂いがするって警察に通報があって、おまわりさんが見に行ったら、中で奥さんが首吊って死んでたんだって。」
「へえ!昨日まではちゃんと掃除してらしたのになあ・・・」
「何言ってるの?
死後一ヶ月くらい経っててかなり腐乱してたんだって」
「そんな馬鹿な!
俺は毎朝・・・それに昨日の夜も
・・・そんな!」

翌日から、その奥さんの掃除する姿はなかった。
あれはもしかしすると、自分を早く見付けて欲しいという合図だったのだろうか?

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