自殺者の幽霊

自殺者の幽霊 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

社会人になったばかりの頃、里帰りした同級5人で飲んだ。

夏だったから恐い話で盛り上がり、夜中2時近くだっただろうか。
地元で有名な心霊スポットのダムへ肝試しに行くことになった。
そこは過去に何件か身投げがあったところで、ある時期に行くと靴が揃えて置いてあると言う。

「ホントにあるのかな?」
「あったらどうする?」

なんて盛り上がっていた。

飲めない奴が運転担当で車で20分程のそこへ行った。
不気味な下り道をゆっくりと進み、ダム敷地に着いた。
管理棟があってそこは電気が付いていた。
そこを気付かれないようにスルーして、ダムの近くの車が数台置けるスペースに駐車しようとすると、先客なのか1台白い車が駐車してあった。

その車は放置車というか、80年代頃のサ○ーで動く様子の無い廃車に思えた。
その車から少し距離を置いて駐車し俺達はダムそのものへ向かった。

そこで、俺達はルールを決めた。

1・何かを見ても大声を出さない事
2・何かを見たものはパニクらずに静かに俺に教える事
3・運転者をあせらせない事

それを確認し合って、ダムの上に着いた。
周りは真っ暗。
ダムの上の道路に外灯が10mピッチ位であるだけ。
ダムの貯め水は黒い湖。不気味そのものだった。
反対側の放流側を覗くと闇で全く高さが分からない。

俺達はゆっくりと中央辺りまで足を進めた。
「こえーなっ」なんて言い合いながらも、何気に靴が並んで置いていないか目で足元を追ってみる。

当然、靴など無かった。

しばらくダム下を覗いたりして5~10分程経った頃、トントンと1人が俺の肩をたたいた。
「ん?」と奴を見ると、目を見開いてダムの渡りきった方向を指差している。
そのまだ行っていないダムの反対岸を見ると人が立っていた。

距離にして30m先ほど。
外灯の明かりが届くかどうかのところで、うっすらと人影が見える。

ドキッとした。

その影は女性だった。
1m間を行ったり来たりしている。
服は赤系の襟付きの半そでシャツと白系のパンツ姿。
年齢は20~30代に見える。

「うわっヤバイ!自殺しに来た人だ!」

と即座に思った。
みんなを小さい声で呼んだ。

「どうした?」
「何?」
「絶対大声出すなよ。あっち見ろよっ」

一斉に全員の視線が反対岸へ。
「!」全員でギョッとする。

「どうする?自殺しに来たのかな?話かけてみる?」
「駄目だよ!絶対ヤバイって!帰ろう!」
「幽霊かな?」

と言った時、気の小さい1人がガクガクと震えだした。

またその女へ目をやると、今度は直系1m位の円を描くようにゆっくりと歩き回っている。
俺は頭が逝っちゃっているんだなと、その時は思った。
こんな夜中に女性が1人であんなところに立っていられるか?と。

とりあえず帰る事にした。
こんな時、自殺者を思い留まらせようなんて出来ないものだなと思った。
恐すぎる。
野郎が5人いても恐すぎる。

「絶対大声出すなよ。ゆっくり帰るぞ」

と全員に言い聞かせて俺達は来た道を戻り車へ向かった。
車が見えてきた。例の不気味な白いサ○ーだ。
その近くに停めた車を確認すると、気が焦って全員が小走りになった。

運転の奴がリモコンで鍵を解除して
白いサ○ーを通り過ぎたと同時に気の小さい奴が突然

「うああああああ~~~~~~!!!!」

と叫んだ。
それ聴いて全員がパニック!

「でかい声出すなよ!!!みんな落ち着けよ!!!」

と言いながら自分も焦って全員で一斉に車に飛び込んだ。

「早く出せよ!早く!!!」

と叫んだ奴が泣きそうに怒鳴る。

「落ち着けって!事故るぞ!!!」

運転手は冷静に車を出した。
来た道とは反対側へ出た。
白のサ○ーを通り過ぎる時、

別の奴が

「うおおおお!!!!」

と叫んだ。
もう車中はパニック状態だった。

林道を抜けて一般道へ出た。
全員が冷や汗をかいていた。

「大声出すなって言ったじゃん。マジやめろよ!」

と俺は怒った。
すると気の小さい奴が

「あの車の運転席見なかったのかよ!」

と怒って返した。

「そうだよ!マジにいたぜ!」

と次に叫んだ奴も言った。

「何がいたんだよ!?」
「あそこにいた女が運転席に座っていたじゃん!」

ゾッした。
背筋が凍りつくという体験を生まれて初めてした。

「やっぱ幽霊だったんだよ!俺見たんだよ!」

二人の目撃者は言った。
一人だったなら幻覚だとか言えるけど、二人同時に見たとなると、そうだったのだろう。
実は俺もそんな事だったら恐いなと思ったのだがビビッて白いサ○ーを見られなかったんだ。
やっぱあの車は当時その自殺者が乗っていたものだったのだろうか?

あくる日の地元新聞を見たが自殺の記事などなく、後日別の友人にその話をして昼間白のサ○ーがあるか見に行ってもらったが、やはり無かったらしい。

俺達はあそこへは二度と行っていない・・・。
だってこえーもん。

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