口論が聞こえる

口論が聞こえる 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

中学に入りたての時、同じ小学校の友達もほとんど居なかったため、クラスで話せる友達を作るのに必死だった。

そんな中、友達になってくれた子は内気で静かな子だった。
仮に陽子とします。
陽子の親は異常に厳しい、というかほとんど何もしてくれず、ほっとかれている印象でした。

遊びに行っても家の中から言い争いをしているような声が聞こえ、

「今親がケンカしてんねん、外いこ」

と大抵は外で遊んでいた。

三学期に入った頃、陽子の着ている服がどんどん汚くなっていった。
髪も伸びっぱなし、ぼさぼさだった。
クラスの仲で陽子と話すのも私くらいで、ほとんどの生徒から避けられていた。

ある日、親とスーパーで買い物をした帰り、暗い中1人で歩いている陽子を見かけた。

「どしたん?こんな時間に・・・」

親が声をかけ、家まで送り届けた。
途中、やせ細った陽子がスーパーの袋を睨みつけるので惣菜パンをあげた。

玄関まで行くと、また口論の声が聞こえる。
家を外から見た時は電気は付いていなかったと思ったが、両親が居るらしい。

「パン、ありがとうございました。それじゃ・・・」

と扉を閉めようとしたが、私の親が遮った。

「陽子ちゃんだいじょぶなん?あたしが親御さんに話してあげよか?」

それでも陽子は頑なに拒みます。
奥から聞こえてくる声も静かになりはじめました。
来客に気づいたのだろうか?

「すみませ~ん、陽子ちゃんの親御さん?」

声をかけると、また口論が始まりました。
しかし、何というか聞いたことのある気がする。
友達の親の声なのだから、聞き覚えはあるはずだが・・・
そう言う事では無く、文言が同じで録音のような印象を受けたのだ。

「あの!大丈夫ですから!あたしが怒られますから!」

そう言って扉を閉めてしまった。

次の日から陽子は学校に来なくなりました。
学校の関係者が家を尋ねましたが、人が居る気配は無かったそうです。

それから月日がたち、就職はしたが未だに実家住みの私は陽子のことを忘れていた。
千葉の女児失踪のニュースを聞き、そのことを思い出した。
母に聞いてみると、最初は渋っていたが事の顛末を話してくれた。

あの後、夜逃げじゃないかと騒ぎは大きくなり、貸し家だったので大家さんが警察立ち合いのもと家に入ったそうだ。
玄関を開けると、家の奥から口論する声が聞こえてきたが、声をかけても反応が無い。
仕方なく家に上がると、人は誰も居なかった。

口論の声はスピーカーから聞こえており、配線が玄関の方へ伸びていた。
玄関を開けると反応して録音した音声が流れる仕組みだった。
まともに生活していた形跡は無かったが、保温状態のポット、大量のカップ麺のゴミ、子供1人が通れるくらいの床が見えた。

その床をたどると押し入れに続いており、その中に陽子の遺体があったそうだ。

録音を流す機構は当然子供の陽子には出来るはずもなく、何らかの理由でそこに住んでいることにしたかった親が仕掛けたのだろう。
陽子は親の言いつけを守り、スケープゴートとして死んでいったのだ。
あの時、無理やりにでも家に上がっていれば、陽子は死なずに済んだのかも知れない。

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