フェンスに登る男

フェンスに登る男 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

夜間高校通ってたときの話。

担任の田中先生(仮)と仲が良くて、放課後に2人で雑談しながら教室掃除するのが日課だった。
他の生徒は、授業終了後すぐに帰ってしまうのがほとんど。
一旦社会に出てから入学したから、先生との歳の差が2つくらいしかなくて向こうも話しやすかったのか、仕事の愚痴とか旦那の愚痴とか聞かされてたw

んで、その日も2人で教室掃除してたら、窓際にいた田中先生がグランド見ながら

「あー、誰かフェンスよじ登ってる。
めんどくさいけど危ないから注意してくるね。」

って言って、小走りに教室を出て行った。
私はその時、田中先生のいた窓際から離れた机吹いててグランドは見えなかった。

ちょっと間して気になったからグランドを見たら、暗くてよく見えないけど確かに学校の敷地を囲んでいる背が高めのフェンスをよじ登ってる赤いジャージ着た人間が見える。
教室は3階にあるしグランドも結構広いからそいつのいるフェンスまでは、まぁ5分弱くらいかかる。

(先生もいちいち馬鹿ガキ相手しなきゃいけなくて大変だなぁ。てか、その間にアイツも降りるだろw)

とか思いながボーッと見てた。
そうこうしてるウチに田中先生の姿がグランドに見えて、赤ジャージはフェンスの一番上にたどり着いていた。

(てか、フェンスの向こう側は山なのになんしに登ってんだ?w)

文字通り私は高みの見物で、一人面白い半分に脳内突っ込みしてた。
田中先生は小走りに赤ジャージのもとに向かっている。
赤ジャージに目を移すと、びっくりすることにフェンスの上に立っていた。

(ちょwアイツすげぇwフェンス枠とか10cmもないだろw)

グランド中程まで走っていた先生も驚いたのか、走ってるスピードがほぼ歩いてる早さになっていた。
遠めにもびっくりしてるのが伝わってきて、私はおかしくてしばらく赤ジャージではなく田中先生を観察していた。

ジリジリとゆっくり歩み寄ってたのに田中先生は、急にクルっと踵を返して、今度は小走りなんかじゃなく全力疾走で必死に校舎に引き返してきた。

(え?)

っと思って赤ジャージを見るとくねくね踊ってるみたいに動いたり、ジャンプしながら手を羽ばたくみたいにバタバタさせてた。
尺取虫みたいな気持ち悪い動きもしてた。
うまく言えないけど、関節がないみたいにぐしゃぐしゃなったり、逆にあり得ない位置に関節があってそっからガクガク手振ったりしてた。

暗くて遠いから見えないけど私は何故か赤ジャージが笑ってる、っと分かった。
赤ジャージが人間じゃない異様なものだって気が付いて、私は怖くなり冷や汗が吹き出した。

(何アイツ!?先生は!?)

田中先生は相変わらず必死に走ってたけど、足がもつれてうまく前に進めないみたいだった。
すると昇降口から学校古参の鈴木先生がダーーッと、田中先生に駆けていって担ぐように支えながら校舎に引き返してきた。

再び赤ジャージを見る勇気のなかった私は、しばらく教室で一人放心してた。
なかなか田中先生が教室にこないので、職員室に行くと真っ青な顔した田中先生を3、4人の他の先生が囲んでた。
そのウチの一人の先生が私に向かって

「○○さんも見た?」

と聞いてきたので、首を縦にふると鈴木先生に険しい顔で

「他の生徒には言わないでほしい。
もちろん生徒以外にも他言しないでくれないか?」

と言われた。
鈴木先生は多分何か知ってるんだろうと思った。
他の先生も険しい顔してて色々聞きたいことはあったけど、私自身恐怖で震えてまともに声が出なかったし、質問出来る雰囲気じゃなく結局その時はなにも聞けなかった。

昼間の仕事場が遠い為、車通学(申請すればOKな学校だった)の私が田中先生を家まで送ることになり、帰りの車中で

「なんだったんだろね…あの赤ジャージ」

と、私が言うと

「赤ジャージじゃないよ、あれ…。
人体模型みたいに人間の皮剥いで筋肉むき出しみたいな感じだった。」

と、ポツリとつぶやかれてさらに怖くなった。

二度とあんな気持ち悪いものはみたくない。
話を書き出すとくねくねっぽいけど、多分違う感じ。

分からんけど。

個人的にくねくねの話読んで妖怪的な神的な印象受けたけど、赤ジャージはもっと人間的(?)な感じだった。
まがまがしい印象は同じだけどね。

田中先生は1~2週間くらいは、暗く落ち込んでたけどその後は徐々に元の感じに戻っていった。
まぁ、その後も窓から外は一切見なかったりカーテン閉めれるときは夜なのにカーテン閉めて、グランドにも極力降りなかったなぁ。
それは私も同じだった。
唯一体育のときは仕方なくグランド行ってたけど。
私が卒業と同時に田中先生も転勤したわ。

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