私が沖縄に住む友人の家に遊びに行った時の話です。
天候が悪く、2日間は近所の町を案内してもらいました。
少し天気が良くなったので、海に潜りに行くことにしました。
ダイビンショップに申し込みをして、友人の家で準備をしていると、彼女のおばぁが
「今日は旧盆だから海には、入らんほうがいいね」
と言った。
私は少し不安になったが、友人は笑って
「大丈夫さ。内地の人には関係ないと思うよ」
と言ってくれた。
船で沖に出てポイントに着くと、そこは美しい珊瑚礁が広がる楽園でした。
私は夢見ごこちで熱帯魚の後を追って行くと、急に耳抜きができなくなりました。
8メートルほどの深さただったでしょうか。
頭がキンキンしてきたことをインストラクターに伝えようとしたのですが、なぜか気づいてもらえません。
他のダイバーもすぐ近くにいるのに、まるで私のことが見えないみたいでした。
痛みに耐え切れませでしたが、それでもゆっくり浮上しよう思いました。
多少経験があったので、潜水病の怖さは知っています。
しかし、水面にあがって行こうとした時、体が金縛りで動かなくなりました。
そして足首を掴まれたと感じた瞬間、体ごと海底にひっぱらました。
気が付くとボートの上で仰向けになっていました。
友人やインストラクターが不安げに私を覗き込んでいました。
私に何が起こったのか、誰も言ってはくれませんでした。
ただ、足首にくっきりと残った五本の指の跡に、黙って包帯を巻いてくれたのでした。