名前を呼ぶ声

名前を呼ぶ声 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

俺の実家があるところは四方を山に囲まれた田舎の村なのだが西側の山にある隧道を抜けた所に、昔練兵場があった。
こんなド田舎に造られた理由は、その練兵場の西側に川があるので物資の輸送が簡単だからだそうだ。

そんなことは何も知らない子供の頃、いつものように今は単なる原っぱになっているそこへ遊びに出かけようと隧道の手前へ差し掛かった時の事だった。
隧道の奥の方で規則よく、それも沢山の人が砂利を踏みしめるザッザと言う音が聞こえてきた
やがてその音は段々大きくなり、奥の方からうっすらと人影が見えてきた。
ざっと50人を超す兵隊が隊列を組んでこちらへ向けて行進してくる。
怖くなった俺は慌てて家へ逃げ帰ろうとしたが、足が動かない。
その時、兵隊の中から「○○(自分の名前)」と声がした。
同時に足が動くようになり、後ろを振り向いたが何もいなかった。

後で知ったのだが、俺の祖父はあの練兵場に勤めており、戦争が始まると南方へと出征しとある島で部隊諸共玉砕して、遺骨などは未だに見つかっていないそうだ。
あれから数年経ち、隧道は老朽化が理由で封鎖され、あそこへはもう行けなくなった。
ただ、今でも原っぱの中にぽつんと立っていた慰霊碑が記憶に残っている。

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