少し長くなりますが承知してください。
発端は高二になった春のこと。
あまりクラスになじめず、その日は休日だったが、僕は外出中の父の書斎で本を読んでいた。
昼ごろ、急に地震が起きた。
揺れは結構大きく、本棚が一つ倒れた。
幸い怪我は無かったが、僕はあることに気付いた。
いつもは本棚で隠れていた壁にドアがあったのだ。
この家には生まれたときから暮らしていたが、こんなドアは知らなかった。
ドアをあけると、そこは一畳くらいの物置スペースみたいな部屋。
その床にはぽつんと30cm四方の木箱が置いてあった。
開けてみると一回り小さな、古い木箱が入っている。
その箱は赤い紐で縛られていて、真ん中に「浦廻」と書かれていた。
そしてその箱も開けると、紙包みがでてきた。
古い紙で、黄ばんでいる。
その中には小刀が入っていた。15cmくらいのかなり錆びていて、先端は折れてた。
気味が悪かったので部屋を出た。
夕方に父(僕は父と二人暮らし)が帰ってきて、父にそのことを伝えると、父は大変驚き焦った様子。
「刀に触ったのか?」
と聞かれ、触ったと答えるとますます焦りだした。
「お祓いをしなきゃダメだ…子供が触っていいものじゃない……」
とか言いながら僕を車にのせ、一時間ほど走った。
父の故郷まで来て、ある家を訪ねた。
その家の男と父はこんな会話をしていた。
「息子が、ウラミバを…」
「そ、それは大変だ!早くこちらへ!」
家に僕は入れられお祓いみたいなことをされた。
正直、状況が理解できずポカーンとしていた。
男は神主らしく、僕に話してくれた。
「大昔、この辺りは鬼が荒らし回っていてね。
ある勇敢な男が鬼と戦い、二つの心臓の片方を刀で突き刺したんだ。
刀はみるみる錆びて折れたんだ。
それが君の家にある刀で、その男は君の祖先だ。」
「でもなんでおはらいなんてするんですか?」
僕は聞いた。
「それは、夜になると鬼が探しにくるからさ。
自分の胸を貫いた刀の持ち主をね。
刀を触って君に臭いがつけば、君を探しにくる。」
「…じゃあ刀なんて捨てればいいじゃないですか」
僕が言うと父がこう返した。
「それは先祖達が何度も試したが無駄だったのさ。
結局手元に返ってきてしまう。
おまえには今まで黙っていて悪かったが、これは一族の宿命なんだ。」
その日は田舎の父の実家に泊まった。
翌朝出発しようとすると、昨日の神主さんが走って来た。
何やら父と話している。
神主さんが帰ると、父は
「まだ刀に近づいてはいけないらしい。学校はしばらく休みなさい」
と言って実家に僕を置いて自分は仕事に出かけた。
その日父は帰って来なかった。
代わりに電話があり、父は
「私が迎えに行くまで待っていろ」
と言った。
実家では祖母と二人だった。
父が来たのは二週間たってからだ。
僕は家に戻り学校にいった。
しかし話し掛けてくる人はいなかった。
学校から帰ると、父は僕に異変が無かったか聞いてきた。
学校では誰とも話さなかった、というと父は、
「まだウラミバの影響が…」
と言い僕をまた田舎に連れて行った。
そしてまた僕を置いて行った。
次に父が迎えに来たのは一ヶ月後。