知り合いの話。
彼の実家の山村に『入ってはいけない』と言われていた袋小路があったという。
駄目と禁止されると行きたくなるのが子供心。
という訳で、ある時、従兄弟と二人で足を踏み入れたのだそうだ。
小路の終わりには赤く錆びた鎖が掛けられていて、その先に獣道のような細い道が続いていた。
鎖を跨いで猶も進んでいくと、割りと広い川に突き当たる。
川にはボロボロに朽ちた橋が架けられていて、それを渡った向こう側に廃屋が二軒並んでいた。
気持ち悪くなって引き返したのだが、このことを祖父に話すと酷く怒られた。
「橋は渡ってないだろうな!?」
聞けば、随分と前の大雨で、その橋は流されているのだそうだ。
「お前等、誘われてたんだよ。
渡ってたら多分帰ってこれなかったぞ」
そんな馬鹿な、と次の日もこっそり二人で確認しに向かったのだが。
昨日あったはずの橋はどこにも見当たらず、川が轟々と流れているだけだった。