後ろに・・・

後ろに・・・ 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

今日も残業で帰りが遅くなってしまった。
ずっと残業が続き、私は疲れ気味。
疲れているときには座って帰りたいけど、そんな時に限って電車は座れるほどには空いていないですよね。
座席が埋まってチラホラと立っている人がいるくらいです。
微妙だね。
いっそ混雑してればあきらめの付くのに。

ドアの所に立って流れ行く街の明かりや通過する駅を見ていた。
やがて電車は郊外を走っている。
ここまでくると、マンションや住宅の明かりばかりになってくる。
この辺は丘陵地帯なのでトンネルがいくつも続く。
トンネルにはいるとドアガラスには車内だけが映る。

ふと視線を感じた。
「あれ」って思ったときにはトンネルを出ていた。
ドアガラスは半分が外の夜景で半分が車内を映している。
ドアガラス越しに映っている車内をみても、私に視線を合わせている人などいない。

次のトンネルでも視線を感じた。

その次のトンネルでも視線を感じた。

あわててドアガラスに反射した車内の風景を見ると、私の真後ろに男性がいる。

「え?」っと振り向くと、誰もいない。
『痴漢? ストーカー?』

変質者だったらいやだな。
何もなければいいけど。
この先に長いトンネルがあるので、じっくりと見てやるぞと決意したが、いけないことをするときのように心臓がバクバクしている。

トンネルに入ると、今度も視線を感じる。
後ろを見るがやはり誰もいない。

改めてドアガラス越しに反射する車内の風景をみると・・・

私の後ろにいる。
それは去年に死に別れた夫。
仕事で疲れている私を心配して見守ってくれている。

『ありがとう・・・私、がんばるから。』

ガラスに映る夫の姿を懐かしく見ていると、唇が動いた。

その動きは『早くこっちにおいでよ』って言ってる。

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