お札の家

お札の家 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

広島県F市にある『お札の家』と呼ばれる心霊スポットに行ってきました。
メンバーは僕と友人二人と友人のバイト先の先輩の四人で、友人の一人、斉木は霊感があります。

今日の零時に友人のバイト先で待ち合わせて、先輩の車で『お札の家』に向かって出発しました。
その道中、また別のスポットで『赤い橋』という場所があり、そこは『お札の家』の近くなんですが、そこを通り過ぎたあとに、霊感のある斉木の携帯電話が一度鳴りました。

そして『お札の家』への山道の入口につき、見るとそこに供養のための地蔵が親子分一対ありました。
僕はなんというか、無知だったので、それを神様か何かかと思ってそれに向かって十字を切って、携帯電話で写真を撮ろうとしました。
その時先に進んでいた友人の中島に「やめろ!」と言われて写真こそ撮らなかったんですが、そこから少しずつおかしな事が起こりはじめました。

地蔵から山道を20メートルほど下ると、フェンスや鎖で道が塞がれている所に出ました。
そこで斉木の携帯がもう一度鳴りました。
が、斉木は携帯を見ることなくそれを無視していたので、僕が「電話無視してやるなよ」と声をかけたんですが、斉木は僕の声に気付かないようでした。

フェンスの横には貼り紙があり、四人でそれを見ると、インターネット上の心ない書き込みにより敷地内に人が入って迷惑している、というものでした。
貼り紙を見ながら、中島がフェンスの向こうを携帯電話のライトで照らしました。
視界は悪く、二メートル先すらよく見えない状態でした。
なぜか三人が寒い、寒気がすると言いました。
僕はそんな感覚はなかったんですが、貼り紙を見たあと後ろに一歩下がった時、あたたかいような冷たいような風を感じ、寒いのは風のせいだろうなと思いました。

それから全員で先に行ってみようということになりました。
フェンスは一部壊されていたので先には進めるのですが、誰も懐中電灯を持っておらず、携帯のライトは光が弱すぎるので入るのをためらっていました。
先輩が「何か見るかもしれないし、行こうか」と声をかけました。
いよいよだなーと呟きながら、僕は中島の肩を叩きました。

ですが中島は、これに気付かないようでした。

そして先輩が一歩足を出したとき、あっと小さく叫んで、「今の見た?見た?」としきりに聞いてきました。
僕ら三人は見ていないのですが、先輩にはなめらかに動いている眩しい赤い光が見えたようです。
全員一旦車に戻ろうという結論に達し、車に戻りました。
戻る前に、僕はまだ地蔵を神様か何かだと思っていたので、無事に帰れてよかったという気持ちから一礼をして車に乗り込みました。

車に乗り込んで赤い光について話していると、また斉木の携帯が鳴りました。
突然斉木が「帰りましょう、早く車を出してください」と言い出しました。
斉木はかなり焦っていたので、怖くなってその場から離れ、とりあえずファミレスで話し合おうということになりました。

『赤い橋』を過ぎた頃、斉木は、車に乗る前に子供の笑い声を聞いたと言いました。

彼が声を聞いたのは僕が地蔵に礼をしたまさにその時だったんですが、まだ僕はその事実に気付かず、声が聞こえたことに関しての話を続けました。
その話をしていると、斉木がふと「今道路脇に線のような青い光を見た」と言いました。
それを聞いて先輩が驚いて、「あの時車に戻って全員がドアを閉めるまで、サイドミラーに青い光が見えてたんだよ」と言い、車の中が凍りつきました。

そしてここからはファミレスで話してわかったことなんですが、斉木の携帯は終始マナーモードで、試しにファミレスで電話をかけてみたのですが振動するだけで音が鳴ることはありませんでした。
そして斉木の携帯は合計三回鳴ったはずなのですが、入っていたメールは二件、そしてファミレスで試した着信一件のみでした。

数が合わないんです。
斉木は家の前のフェンスの所で携帯が鳴ったときのみ携帯を見ていません。
つまり誰から着信が来たのか、あるいはメールが来たのかは、まったくわかりません。

そして最もぞっとしたのは、三人はあそこでほとんど僕の姿を見ていないし、声も聞いていないということです。
僕が斉木にかけた声を聞いたのは中島だけで、その中島も、斉木の横にいたはずの僕の声だけしか聞いていません。
僕が中島の肩を叩いたのを先輩は見ていますが、中島は肩を叩かれていないというし、斉木もそれを見ていません。
また僕が感じた風も三人はまったく感じておらず、無風だったと言っています。

そして中島がフェンスの向こうを照らした時、僕は中島の前にいたはずなんですが、今思うと、その光に僕の影は映っていなかったのです。
やはり十字を切ったのがまずかったのでしょうか。
今生きているのが不思議なくらいです……

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