腰の曲ったお婆さん

腰の曲ったお婆さん 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

これは、家族で出掛けた時の話です。
共働きで多忙な両親が、休日の貴重な時間を使って家族サービスとして山梨県のとある川に車で渓流釣りに行きました。

何時間か車を走らせて、目的地に到達。
渓流釣りなので、お察しのように結局何も釣れませんでしたが、楽しいひとときを過ごせました。
いやぁ、渓流釣りって難しいですね(笑)
釣りも終わり、西日が強くなってきたあたりで

「そろそろ帰ろうか。」

と父に言われ、みんなでダラダラと帰り支度をして車に乗り込みました。
まぁ、ダラダラと片付けをしていたので日も落ちてしまい

「安全運転でー(笑)」

なんてふざけながら、父は車を運転していて、他のみんなもギャーギャーと賑やかに騒いでいました。
しばらく行くと、街頭も何も無い山の中の一本道に差し掛かりました。
本当に真っ暗なので、スピードを落とし車のヘッドライトだけを頼りにノロノロと進んでいきました。
ノロノロ進んでいると、ヘッドライトの端に急に影が現れたんです。
最初、何か動物かなぁ何て思っていたのですが近づくに連れて杖をついた腰の曲ったお婆さんな事に気付きました。
なんと言うか、トトロに出てくるお婆さんみたいな格好をしていました。
僕はこの時ゾッとしました。
だって、灯かりがなければ何も見えないような暗い山の一本道で、腰の曲ったお婆さんが歩いているなんて普通じゃありえないじゃないですか。
その時、父以外の家族もそれに気付いたようでそれまで賑やかだった車内が途端に静かになりました。

「父さん、スピード上げて」

怖さからそう、父に告げました。
ですが、そんな事は気にもとめずに父がそのまま車で近づいて話しかけました。

「こんばんは、大丈夫ですか?良かったら乗せていきましょうか?」
「…………」
「もしもし、聴こえてるー?」

その時何故か、ヤバい!と感じて父に

「早く行って!!」

と、叫びました。
僕の叫び声に、一瞬我に返ったようにはっとなると、すぐにアクセルを踏んで一本道を走り抜けました。
やっとの思いで大通りに出てしばらくすると、緊張から開放されて安心したのか僕と父以外の他のみんなは寝てしまいました。
すると、それを確認するように父がちらっとバックミラーを覗いてから、僕に話しかけてきました。

「さっきの髪の長い女の人さー……」

その後も何か言っていたようですが、僕の耳には入ってきません。
適当に相槌をうちながら話を流して、そのうちに僕にも睡魔が襲ってきて眠りに落ちてしまいました。
そりゃ、怖かったですよ。
あの暗い道を1人でいたのもそうですが、僕には田舎にいるようなお婆さんに見えたのに、父には髪の長い女の人が見えていたらしいですから……

後日他の家族にも聞いてみたところ、僕以外は髪の長い女の人が見えていたらしいです。
僕はいったい何を見ていたんでしょうか……

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