呪いの刀

呪いの刀 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

何年か前に俺が体験した怖かった出来事について語ってく。

俺は霊感ゼロだし幽霊とかも信じてなかったけど、この一件で信じるようになった。
ありえんような話だから、まあ創作だと思って気軽に見て行ってくれ。

注意事項な
・見たら呪われる系の話じゃないんでご安心を
・内容的に人によっては反日、在日だと誤解される内容があるかもだけど俺は純粋な日本人
・書き溜めてないからゆっくりです

とりあえず当事者のスペックな

俺 田舎の高校二年生
  霊感ゼロ
  身長低いフツメン
  趣味はゲーム
  
兄 大学2年生
  本人曰く若干霊感あり(よく金縛りに合うらしい)
  身長低いフツメン
  趣味はPCいじり

母 専業主婦
  霊感ゼロ
  しっかりしている

父 公務員
  霊感ゼロだが、本人曰く若いころは霊感あったらしい
  結構抜けているところがある

近所のおじいさん 詳しくは後程
それじゃ語ってくわ

事の発端はさっき紹介した近所のおじいさんが亡くなったところから始まる。
その近所のおじいさんってのは家の近所に住んでいた普通のおじいさん。そのまんまだな。
人当たりがすごく良くて、俺たち兄弟がガキの頃はよく一緒に遊んでくれていた。
たまに家に上げてもらってスイカとかごちそうになってた。
近所との付き合いも広い人で、うちはもちろんのこと、他の近所の人たちとも仲が良かった。
ただ身寄りがなく、俺が高校に入学するころには体調を崩してあまり外には出てこなくなっていた。
そのころはヘルパーのおばさんがおじいさんの家をよく出入りしているのを見かけた。

そんなある休日のことだったんだが、そのヘルパーさんがうちに訪ねてきた。
何だろうと思うと、おじいさんが亡くなったから葬式に参加してほしいとの知らせだった。
死因はよく覚えてないんだけど、なんかの病気だったと思う。
ヘルパーさんの話だと、おじいさんは亡くなる前に遺書をしっかり書いていたそうで、死んだ後の遺産のことや、家屋の処理についてヘルパーさんに頼んでいたとのことだった。
その遺書の中に、家の家具や食器などは近所のほしい人にあげてもいいと書いていたそうで、欲しいものがあれば家屋を解体する前に持っていってくれとのことだった。

うちの両親は別に行かなくてもいいと言っていたので、俺と兄で家を見に行くことになった。
俺はおじいさんとの思い出の品でもあればいいなと思っていたが、兄は売れそうなものを見つけてお金にしようとしていたらしい。
実際におじいさんの家に行ってみると先客が結構いて、めぼしいものはほとんど残ってなかった。
俺は庭に置いてあったおじいさんが大切に育てたであろう盆栽を1つ頂いて帰ったんだが、兄はもう少し探索してから帰ると言っていた。

俺が家に帰って盆栽の管理方法について調べていると兄が意気揚々と帰ってきた。
なんでもおじいさんの家で面白いものを見つけたと言っていた。
兄は布に包んだ棒状の物を俺に渡してきた。
布を取ってみると中にはなんと立派な刀が入っていた。
かっこええ!と思うと同時に、これ銃刀法違反とかで違法なんじゃね?と心配になった思い出。
鞘から刀を抜いてみると刀身は結構さびてて、銀色の部分のほうが少なかったと思う。

兄「めっちゃカッコいいだろ?オークションで高く売れそうじゃん?」
俺「売れるかもしれないけど、法律上いろいろまずいんじゃない?」
兄「すぐ売れば大丈夫でしょ!」

うろ覚えだけどこんな感じの会話をしたと思う。
この日の夜からうちで不可解な現象が起きるようになる。

その日の夜のことだった。
家族みんなで晩飯を食べていると誰もいないはずの玄関のライトがぱっとついた。
家の玄関のライトはセンサー式で人が通ったりしたら明かりが点くんだが、家族は全員居間にいるから玄関に誰もいないのは明確だった。
その時は家族みんなで「不思議だねえ」「虫にでも反応したんだろ」みたいな話をしたと思う。
そのあとは普通にテレビ見て、風呂に入って寝た。

俺はその日寝てから人生の中で1番最悪な夢を見た。
今でもはっきり思い出せるくらい。
俺は知らない部屋の中でぶっ倒れてた。
脇腹が痛くて痛くて動くことができなかった。
頑張って脇腹を見てみると服が血で真っ赤になっていた。
頭の上のほうから謎の言語で叫んでいる声が聞こえたんだが、知らない言語なのに「たすけて!」 「いやだ!」と言っているのが分かった。
声のする方を見ると、俺の妹が軍人らしき人たちに暴行されていた。
ちなみに現実の俺に妹なんていない。
でもそこにいるのは間違いなく俺の妹だった。
もう訳わからんな。
妹は俺に必死に助けを求めて抵抗していたが、軍人数名に押さえつけられ、殴られ、本当に無力な抵抗だったと思う。
俺はもうね、マジで怒りに震えてた。
その軍人どもが憎くて憎くて仕方なかった。

さっきまで幸せな家庭だったのに、こんなの酷すぎるって。
たとえこの命が尽きても、絶対にこいつらをぶっころす。
まだ年端もいかない妹をこんな目に合わせている奴らを許しはしない。
俺はもう怒りと憎しみだけで立ち上がってた。
脇腹は死ぬほど痛かったけど、口の中は血だらけで声も出なかったけど、そんなことはどうでもよかった。
そうして妹に群がる軍人どもに飛びかかろうとしたとき、背中に激痛が走ってまた倒れた。
もう訳が分からなかったがとにかく憎かった。
背中の方からははっきりと日本語で

「下衆ながらあっぱれなものだな。誇って氏ぬがいい。」

と聞こえた。
でもその時の俺にはこれがなんて言っているのか分からなかった。
視界が暗くなっていく中、ただただ憎くて憎くて悔しくて情けなくて。
俺は汗だくで飛び起きた。
もう訳が分からな過ぎて、憎い感情も収まってなくて、今のが夢だと気付くのに3分くらいかかった。

高校生のくせに怖くなってしまった俺は一人で暗い部屋にいることができずに、とりあえずお茶でも飲もうと思って居間に行った。
居間に行くと深夜にもかかわらず母親が起きていた。母親はなぜか洗面器にゲロ吐いてた。

俺「どうしたん?体調でも悪い?」
母「いやね、そういうわけじゃないけど嫌な夢を見てね・・・」

ゲロゲロ
話しながらゲロを吐き続ける母親。
なぜか俺ももらいゲロをしてしまった。
俺は床にしてしまったゲロを処理しながら俺も嫌な夢を見たことを話した。
お互い見た夢の内容が内容だっただけに詳しい内容までは話さなかった。

母親に後日聞いた話だと、夢の中では母親は妊婦で、何かから逃げるように川の中を歩いていたらしい。
ようやく岸にたどり着いて、助かったと思った途端に何者かに刀でざっくりと切られたそうだ。
その後その何者かは母親の腹を裂いて赤子を取り出し、母親の前で斬殺したとのことだ。
その赤子ってのが結構大きかったみたいで産声をあげていて、その産声が頭から離れないって言った。
まあ、この母親の話は全部事が終わってから聞いた話で、このときは嫌な夢とだけ言ってたと思う。
そんなこんなでゲロの処理が終わるころ、兄の部屋から奇声が聞こえてきた。
何事かと思って兄の部屋に直行したら、そこにはとんでもない光景が広がっていた。

兄の部屋を見ると、全裸で鬼気迫る表情の兄が奇声を発しながら自分のケツをパシパシ叩いてた。
俺はこれはヤバいと思って全力で兄を押さえつけた。
兄は思いのほか全然抵抗とかしないであっさりと取り押さえられた。
俺は兄が何かに取り憑かれたか、気が狂ってしまったのかと思っていたんだが、信じられないことに兄は正気だった。
何でも兄も怖い夢を見たらしく、全裸でケツを叩いていたのは除霊のおまじないだと言っていた。
後で調べて分かったんだけど「ビックリするほどユートピア」っていう割と有名なおまじないだった。
こんな話だけどギャグとかじゃなくてマジな話だからな
この日は父親以外の家族は全員ガクブルで居間に布団を敷いて一緒に寝た

次の日、兄と昨日見た夢の内容について語った。
兄は何でも処刑される夢を見たとか。
処刑された理由は「目つきが鋭いから」
むちゃくちゃ訳わからんけど兄は夢の中で目つきが鋭いゆえに処刑されたらしい。
お互いの夢を語っていくうちに共通点がいくつかあった。

お互いに殺される夢であること。
夢の中で自分たちの言語が未知の言語であること。
死ぬ直前に日本語を聞いているが、夢の中では日本語を理解できていないこと。

こういった共通点が見つかった。
兄はこれは心霊的なものじゃないかって言ってた。
俺は幽霊とか信じてなかったけど、実際怖かったしそーゆーのもあり得るんじゃないかって思い始めてた。
ではこのような怪奇現状?が起きている原因と言えば思い当たる節は1つしかない。

おじいさんの家から持ってきた刀だ。

あの刀絶対呪われてんだろって結論が出た。
問題は刀をどうするか。
俺はおじいさんの家に返して来ればいいと思ったんだけど、兄はどうしても売りたいと言っていて、その日のうちにオークションに出すことになった。
でも刀は落札されることなくまた夜を迎えた。
この日は玄関のセンサーが大暴れだった。
昨日は1回だったのが今日は数分おきにライトが光る光る。
父親以外はもうガクブルでした。
父親はセンサーがぶっ壊れたんだなって言ってライトの電源を落としてた。
そのあとは家じゅうラップ音がバッシバシ。
兄は刀を家に置いたまま友達の家に泊まりに行った。
まじ兄ふぁっく。

その日も仕方なしに寝ることになって絶対寝れないわって思ったけど普通に寝てしまった。
そして案の定また最悪な夢を見てしまう。
今度の夢は前回の夢とはまた違った夢だった。

俺は河川敷にいて、手と足を手錠みたいなので固定されて正座してた。
それでなぜか体はビショビショ。
水ではなく、灯油?みたいなのでビチョビチョ。
で、俺の周りにも同じように手錠されてビチョビチョの人が何人かいた。
それで数人の軍人らしき人たちに銃を向けられた状態で無言でみんなで正座してた。
これはもう火を点けられる以外の選択肢はない状況だろうと思った。
だったらせめて軍人を一人でも道ずれにしてやろうと考えていた。

そのうち案の定、数名の軍人が火のついた松明みたいなのを持ってきて俺達のほうに投げてきた。
もちろん俺たちは大炎上した。
最初はヒリヒリするだけで割と大丈夫だったんだけど、すぐに全身が痛くて死にそうになった。
やるなら今だと思って近くにいた軍人に向かってジャンプ。
でも、足にも手錠されてるから当然上手く移動できずに転倒。
それでも一矢報いようともがいてみるも、もう痛すぎて一矢報いろうって考えを忘れた。
痛すぎてのたうち回っているうちに段々目が見えなくなってきた。
眼球っていうか、顔の内側が焼けてるような感じがして死ぬかと思った。
もう死ぬ思いで薄れていく視界の中で軍人っぽいシルエットに向かって全力で転がった。
もう少しで届くかもしれないと思ったときに、何か冷たいものが俺の胸を貫いていた。
ああ、ここまでかって思ったところで目が覚めた。

もう夢だってすぐに分かったんだけど全身ヒリヒリするし、胸の所が冷たい感覚も残ってて気分は最悪だった。
また居間に行ってみたら母親も起きてて録画したドラマを見てた。
母親はそもそも寝る気がなく、オールするつもりだった。

母「また怖い夢見たんでしょ?」
俺「うん」
母「兄はそれが嫌で逃げ出したのかもね」
俺「それ以外ありえないでしょ」

この日は母親とドラマを見て夜を明かしました。

ドラマを見ながら俺はいろいろと考えた。
俺達の見た夢は、おそらく日本軍に殺された、それもあの刀で殺されたどっかの国の人たちの怨念が俺達に死んだときの夢を見せてるんじゃないかって。
そう考えれば辻褄が合うような気がしてた。
ではなぜそんな刀がおじいさんの家にあったのか。
おじいさんは怖い夢を毎晩見ていたのか?
そんな疑問が出てきた。
次の日はおじいさんの葬式だったので、俺はそこでヘルパーさんに話を聞きてみようと思った。

そして葬式当日。
おじいさんの葬式に行く前に俺は父親に変な夢を見てないか聞いてみた。

父「夢?ああ、そういえば二日連続で似たような夢を見たな。」
俺「どんな夢?」
父「知らない国でな、立派な刀を持ってな、悪いやつらをズバッと切ってく夢だよ。
妙にリアルな夢でな、夢の中では父さんはヒーローなんだよ。」
俺「マジか」

信じられないことに父親は斬る側の視点から夢を見ているようだった。
変な話だけど俺は父親に対して物凄い殺意を感じたよ。
夢の中では俺は斬られる側の視点にいるわけだからね。
と言うことはだよ、この刀には切られた人の怨念だけじゃなくて斬った人の魂も籠ってるの?
ってことになってしまう。
まあヘルパーさんに聞いてみれば分かるかって思って、このときは考えるのをやめた。

そして始まったおじいさんの葬式。
参列者は少なくて半分くらいは近所の人たちだったと思う。
ちなみに兄は来なかった。マジふぁっく。
葬式は何事もなく淡々と行われた。
葬式が終わってすぐにヘルパーさんを捕まえて刀について聞いてみたが、ヘルパーさんはなんと刀の存在自体知らなかった。
マジかよって思ってたら近くで話を聞いていた知らないおじさんに「そういうのは神社さもっていげ」って言われた。
俺はおじいさんに言われたとおりに神社に持っていくことにした。

一旦家に戻ってから刀を持って、俺は自転車で近所の神社へ向かった。
オークションの出品を取り下げようと思ったけどパスワードが分からずログインできなかったのでそのままオークションは放置した。

近所の神社に行くと30歳くらいの神主さんが快く迎えてくれた。
事情を話している間は神主さんはうんうんと話を聞いてくれた。

神主「これはもしかしたらそういう曰くつきの刀かもしれないけどさ、そのおじいさんの家から勝手に持ってきちゃったんだよね?
それならここじゃなくて、まずはケーサツに届け出を出したらいいんじゃないかな。」
俺「なるほど。」

神主様のありがたいお言葉をいただいた俺は警察に連絡をした。

ケーサツ「あー今日はもう担当の窓口終わってるので明日また連絡もらえますか?」
俺「はい。」

こうして俺はもう一日この刀と夜を明かすことになった。
俺は苦肉の策で刀を家の小屋に置いた。
同じ敷地でも建物が違えばひょっとすると・・・って思って。

昨日オールしただけあって俺と母親はめちゃくちゃ眠かった。
小屋に置いておけば大丈夫だろっていう思考停止作戦で俺たちは寝ることにした。
ちなみに寝る前に兄から電話があった。

兄「刀どうなった?」
俺「明日警察に持っていくことになった。」
兄「ふーん。それじゃ俺はもう一晩友達んちに泊まってくわ!」ブチッ

まじ兄ふぁっく。
俺はこの日は悪夢を見ることはなかった。
正確に言えば悪夢を見る前に母親にたたき起こされた。
突然起こされて何事かと思ったら居間の方から変な声が聞こえてくる。
「私の刀はどこだ!?」と。

母「ヤバいよ!ヤバいよ!父がおかしくなっちゃったよ!」
俺「うん?」
母「突然起きてきたと思ったら、刀はどこだーって言って暴れてんの!ヤバいよ!」

完全にパニックの母親に寝ぼけ頭の俺。
状況はさっぱり分からなかった。
とりあえず居間に行ってみるとめちゃくちゃに荒らされててビックリしたよ。
それで息の荒い父親に「俺の刀をどこにやった?」って胸倉を掴まれた。
俺はもうビビりまくりで「そ、外の小屋に置いてあります!」って。
父親は俺を突き飛ばすとズカズカと玄関から出て行った。
母親が慌てて玄関のカギを閉めてた。

俺は訳が分からないってのもあったけど、胸倉を掴まれて突き飛ばされたことに非常に腹が立った。
母親が「どうしよう、通報した方がいいのかな!?」とか言ってたけどどうでもよくなってしまった。
外からは暗い中小屋を物色する音が聞こえる。
そもそもおかしな話なんだよな、誰も被害を受けてない父親には刀のことなんて何も話してない。
父親は刀の存在自体知らないはずなのに、俺の刀とか言っちゃってるし。
ここまで考えてやっと父親がなんかに取り憑かれてるんじゃないかって発想に思い当たった。

では父親がどうやったら正気に戻るか。
除霊の方法なんて俺は兄のやっていたビックリするほどユートピアしか知らないし、やってみようって気はビックリするほどなかった。
外では刀を見つけたであろう父が「あけろ!」と暴言を吐きながらドアをガンガン叩いてた。
悩んだ挙句、俺は物理的に父親を気絶させることにした。
冷静な判断ができれば通報するなりしたと思うんだけど、このときは非常に腹が立っていて父親をぶん殴ってやりたかった。
俺は松島へ旅行に行ったときに買った木刀を装備して勢いよく玄関のドアを開けた。

ドアを開けると、勢いよく開いたドアにぶつかった父親が尻餅をついていた。
父親は手にしっかりと刀を持っていた。鞘から抜いた状態で。
錆びているとはいえマジもんの刀。
突然怖くなってしまい「うひっ!」とか変な声が出た。

父「何をするか!!」
俺「ひいい!!」

父親は刀を振り上げて思いっきり切りかかってきた。
死ぬかと思った。
俺は目をつぶってビビりながら木刀で必死のガード。
ゴキッって変な音がした。
恐る恐る目を開けると刀が見事にポッキリ折れていた。

俺は刀で切られそうになったっていう恐怖のあまりその場でゲロをした。
父親はポカーンとしてた。

「俺は?へ?夢?」

みたいな感じで父親も寝ぼけたようにパニック状態になっていた。
母親が出てきて俺達を落ち着かせてくれた。
父親はなんだか寝ぼけたようにフラフラと布団に戻っていった。
一応正気ではあったようだった。
俺は恐怖のあまり寝ることをあきらめた。
母親も結局寝なかった。

俺は次の日朝一番で警察に連絡をした。
刀を見つけた経緯を話すと、とりあえず鑑定をするから日程が決まるまで持っていてくれって言われた。
冗談じゃない。
もうこの刀と夜を共にしたくなさ過ぎて電話しながら号泣。

俺「この刀マジ呪われてんですよぉ・・・」

みたいな感じで。
今思うと恥ずかしすぎる。
警察の人もドン引きだったんじゃないかな。
話していくうちに、とりあえず事情を詳しく聞きたいということだったので俺は刀を持って警察署へ行くことになった。

警察署に行くとすぐに担当の人が来て話を聞いてくれた。
折れているのを見ると、「これはもう処分だろうなあ」って言ってました。
急を要する用がない場合は処分の手続きが済むまで家で預かってもらわなければならないとも言われた。
マジで本当にそれだけは勘弁してほしかったので、泣く泣くこれまでの経緯を説明。
悪夢の内容から父親の変貌まで。
警察の人は「それが本当なら殺人未遂だなぁ(笑)」みたいな反応。
子供だからって全然取り合ってくれなかった。
早く預かれるように善処してくれること、急を要する理由としては前例がないことから上の人に聞いてみることこの二つを約束して結局は刀を持ち帰ることになってしまった。

俺は絶望のうちに家に帰った。
家に帰ってからは刀を置いて図書館に行った。
勉強をする為でなく、本を読むためでもない。寝るためだ。
机に突っ伏しての昼寝だったけど、何時間も熟睡することができた。
夕方になるころに図書館の人に起こされた。
ついでにここは寝るところじゃないって怒られた。

ケータイを見ていると謎の不在着信が入っていた。
恐る恐る折り返してみると警察だった。

警察「俺君のケータイで間違いありませんか?警察の物ですが」
俺「はい」
警察「先ほどの刀の件ですが、こちらですぐに預かることになりましたが問題ありませんか?」
俺「え!?は、はい」
警察「では今から回収に伺いますので家で待っていてください。」
俺「へ!?は、はい」

こんな感じの会話をした。
あまりの対応の早さに正直驚いてた。
慌てて家に帰ると家の前にパトカーがすでに止まっていた。
いつの間にか帰ってきていた兄が玄関でオロオロしてた。
ついでに言うと数名の野次馬もいて気分はあまりよろしくなかった。

警察「俺さんで間違いありませんね?」
俺「はい」
警察「この刀はこちらですぐにでも処分させていただきますが構いませんね?」
俺「は、はい」
警察「では処分が済みましたらまた連絡しますね。」

物凄い手短に話をして警察は刀を持ってとっとと帰って行った。
あまりの対応の早さに唖然とするばかりだった。

そのあと兄にこれまでの経緯を説明。
話している途中でイライラしてきたので兄の顔面にストレートを入れる。
そこから兄弟初の取っ組み合いのけんかになった。
兄が思い出したようにオークションを見ると結局落札されていなかった。
開始価格から結構な高値だったのが原因だと思う。

その日の夜、家族が集まってから家族会議をした。
これまでの経緯を整理した。
みんなの見た夢の発表が主な感じだった。
父親は暴れた件について父親はなんとなく覚えているけど、刀が折れるまで夢を見ているような感じだったそうだ。
そんな話をしている中

玄関のライトが付いた。

もちろん玄関には誰もいない。
もう家族全員ガクブル。
刀はもうないのになぜ?
思い当たる節はあった。
だって玄関で呪いの刀折っちゃったじゃん。
俺の考えでは刀に籠っていた怨念とかが折った拍子に刀から解放されちゃったんだと思った。
父親が塩持ってこいって言って、家族全員で家じゅうに塩をばらまいた。食塩だけどね。

そこからはうちは幽霊屋敷と化した。
ラップ音が鳴りやむことなく、鏡には変な影が映りこみ、誰もいないのに足音がしたり
焦げ臭いにおいがしたり、カーテンが揺れたり、兄がユートピアしたり・・・

兄が入浴中に風呂のドアのすりガラスの向こう側に人影を発見。
大声を出して助けを求めるも誰にも声は届かなかったらしい。
意を決して扉を開けるが、案の定誰もいない。
その場で全力でユートピア。
ユートピアの奇声は家じゅうに響き渡ってた。

怪奇現象らしい怪奇現象はほぼ網羅してたと思う。
俺達はたまらず家を飛び出した。
その日は車で15分くらいのビジネスホテルに泊まった。
ホテルでは何事もなく朝を迎えることができたんだけど、車に戻ると車の窓の内側に赤い手形がついてた。
赤い手形とかテンプレすぎるでしょwwとか兄と話してたけど、内心死ぬほど怖かった。

ホテルを出た俺たちはすぐさま近所の神社へ直行した。
朝早い時間だったのにもかかわらず、神主さんが快く迎えてくれた。
事情を話すと

神主「いやー、そこまでいくと私の手に負えるかどうか・・・・」
俺「お願いです!助けてください!」
母「思い出の詰まった家なんです!」
父「まだローンが半分も残ってるんです!」
神主「とりあえず車の手形を見に行きましょうか」

俺達は駐車場に止めてある車へ向かった。
車が見えた時点で神主が立ち止まった。

神主「いや、すごく嫌な感じがしますね。
一旦戻って応援を呼びましょう。」

俺達は神社に引き返してお茶とおかしを頂いた。
その間神主はあちこちに電話をしていた。
すると続々と他の神社の神主らしき人たちがやってきた。
中には「あの車は何だ!」と怒鳴りながら入ってくる人もいた。
総勢9名の神主とそのお手伝いの人たち。
中々の壮観だった。

その中の一人が俺と父親に悪いものが憑いてしまっていると言ってきた。
そりゃあんだけいろいろ起きていれば憑いていないほうがおかしい。
俺と父親は本堂?に通されて神主二人掛でお祓いを受けた。
20分くらい何事もなく過ぎたけど、心なしか気分が晴れた気はした。
俺たち二人がお祓いを受けている間に車のお祓いも他の神主たちの手によって行われていた。
神主3人が木の棒に紙が付いたやつとか、葉っぱとかを一生懸命振っていた。
こちらも20分くらいで終わったが終わるころには神主たちはめっちゃ息切れして疲れてた。

車のお祓いが終わった時点で一旦作戦会議が行われた。
まず俺には中年男の霊が、父親にはおじいさんの霊がついていたらしい。
いずれも外国人だろうとのことだった。
車には2人の子供の霊がいたらしい。
こっちは日本人だそうだ。
なんで日本人が?って思ったけど、強い霊が集まっていると他の関係ない霊も惹かれてしまうとかなんとか。
そしてこの後にはいよいよ家に向かうことになった。

家に着くと神主の一人が吐いた。
他の神主も気分が悪そうだった。

神主A「これは想像以上ですね。これをほおっておくわけには行きませんが・・・」
神主B「いったん戻ってしっかりと準備をしてからまた後日出直しましょう。」
神主C「ご家族の皆さんもそれで構いませんか?」
父親「わかりました。」

家の状態は想像以上に悪いらしく、明日また出直すことになった。
ちなみに次の日は学校の予定だったが、父親に休んでいいと言われた。
俺達は除霊済みの車でまたビジネスホテルに泊まった。

次の日の朝、いよいよ家の除霊がはじまった。
家の周りを白い紙で囲って、即席の神棚みたいなのを玄関の前に用意して、それはもう大きな儀式だった。
車の除霊の時に使った木の棒や葉っぱを神主さんたちが必死に振り回す。
家の外壁のあちらこちらにお札をペタペタと張っていく。
ここでいったん休憩を挟む。
何でもこれでやっと準備ができたとのことだった。

その後神主が二人家の中に入っていった。
中で何をしてたのかは分からないけど1時間くらいして出てきた。
説明だと無事済んだとのことだった。
後は家の中のお札さえはがさなければ大丈夫と。
ちなみに経費はもちろん高くつき、父親は頭を抱えてた。
俺達は神主たちに散々お礼をして家に入った。
家の中では基本的に一部屋に1枚、廊下とかトイレには数枚って感じでお札が貼ってあった。
結局あの刀が何だったのか、おじいさんがなんで持っていたのか、謎は残るばかりだった。

後でその話をしたときに兄が

「もし本当に外国人を大量に斬った刀だったとしたらさ、DNAとか出ちゃうと外交的にもいろいろまずいんじゃね?
そう考えると警察の素早い対応にも頷けるよな」

って言ってて怖くなった。

その後定期的に神主さんがお札を張り替えに来るけど、目立った怪奇現象は無くなりました。
なんだか微妙なオチだけどこれでおしまいです。

★この話の怖さはどうでした?
  • 全然怖くない
  • まぁまぁ怖い
  • 怖い
  • 超絶怖い!
  • 怖くないが面白い