家出の記憶

家出の記憶 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

小学校2年生の頃、理由は覚えていないが母親に激しく怒られた。
理由は覚えていないが、あんたはうちの子じゃない!みたいなことを言われたのだろう。
はっきり覚えてるのは、大泣きしながら母親が仕事で使っていた赤のサインペンで破った自由帳に書いたこと。

『ほんとのおかあさんをさがします』

そして俺は家出した。
両親は共働きで、俺は小学校に入るまで母の職場の保育室で育った。
だから電車の乗り方は知っていたし、実際その時も、当時の自宅から数百メートルの距離にあるT駅から電車に乗った。
そして母の職場とは逆方面の電車に乗ったのは覚えている。
あとはその家出中に、誰か優しい女性と海に行った記憶がある。
そして凄くまぶしい草原のイメージ…

そして次にある記憶は、俺が目を覚ますと自宅で寝ていて、父親と母親が号泣して俺に縋り付いている場面。
それからは俺は普通に生活していたと思う。
中学~高校~大学~就職と今を生きている。
ただあの日以来、何か世界が変わったような感覚が今でも拭いきれない。
それ以来、母が人が変わったように優しくなったから。

三年前に母は他界した。
遺品整理の折に、行李の中から数冊の日記を見つけた。
俺が行方不明になった日は、母の激しい懺悔が記されていた。
そしてそこに張り付けられていたのは、俺が残したメモ。
ただ、俺の記憶と違うのは、それが緑のペンで書かれていたこと。

そしてその後の日記から、俺はどうやら行方不明で警察も動いたらしいことが読み取れた。
そして段々憔悴していく母の様子が記されていき、ある日『発見』という一語のあるページで日記は終わってた。
その日を俺が行方不明から発見された日だとするのなら、行方不明になったときから二週間、俺はどこに行っていたんだろう?
保育所で起きたこと、小学校の入学式のこともおぼろげながら覚えている。
その家に帰ってからのこともそれなりに覚えている。
だけどその2週間の間のことは、先に書いたことくらいしか覚えていない。
父は十数年前に他界しているし、主だった親戚もいない。
当時と住んでいるところも変わっている。
母親は俺に何も言わなかったし、俺は俺で家出していたのは1日だけのことだと思っている。

いったい何があったのか今更だけど知りたい。

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