大学1年生の夏休みに、同じ大学のサークル仲間であるA子、B子、C男、D男と共に、A子の田舎へと旅行に出かけました。
A子の田舎にある家は古いらしいのですが凄く広くて、今は誰も使っていないので自分達で掃除をするなら何泊でもしてもいいとの事で、折角だからと暇をしていた皆で遊びに行ったのでした。
近くには山も海もありますし、車で少し行くとスーパーもあり、宿泊初日の夜は皆でご飯を作ったり花火をしたりととても楽しい夜を過ごしました。
そして翌日の夜0時を過ぎた頃の事です。
自称怖いモノ知らずのC男が「肝試しをしよう」と言い出しました。
私とA子は怖い話が苦手なので行きたい人だけで行ってよ~と拒否していたのですが、他の皆がとても乗り気なので渋々付き合う形となってしまいました。
C男の言う肝試しとは…
2グループに分かれて、泊まっている家から歩いて10分くらいの所にある神社へ行きます。
そこの階段を全て上がった所にある物を置いてくるから、次のグループがそれを取って帰ってくる、というものでした。
それを聞いた瞬間にA子は
「あの神社は駄目。地元の人でも滅多に近寄らないし、私も子供の頃から行くなって親に言われてる」
と止めたのですが、C男とD男はお構いなしに
「幽霊なんている訳ないでしょ、怖いなら俺らだけで行ってくるから」
と歩いて行ってしまったのです。
私とA子、B子はとりあえずあの2人が帰ってくるのを待ってみたのですが、1時間経っても帰ってくる気配もありません。
それぞれの携帯にも何度もかけてみましたが、着信はあるのに全く出ず、仕方なく近くに住むというA子の親戚のEさんの所へ事情を話に行きました。
するとEさんはA子の話しを聞いた瞬間に、A子をビンタして
「どうしてもっと強く止めなかった!」
と怒鳴ったのです。
そして
「近所の者を集めて探しに行くが、手遅れかもしれない。君らはここで待っていなさい」
と出かけてしまいました。
私、A子、B子がEさんのお家でEさんの奥さんや子供さん達と待っていると、2時間程経った頃でしょうか。
Eさんが戻ってきました。
しかし暗い顔をして
「今からFさん方が来てお祓いをしてくれるが、あいつらはもう駄目だろう」
と言ったのです。
私達3人も念の為に一緒にお祓いをしてもらう事になりEさんの離れに行ったのですが、その扉を開けた瞬間に途轍もない絶望感が襲ってきました。
そこには縄で縛られ猿ぐつわを噛まされたC男とD男がおりましたが、2人共目は虚ろでピクリとも動きません。
そしてその2人の近くに居るだけで私達は「死にたい」という気持ちが全身を駆け巡り、どうしようもない倦怠感が襲ってきたのです。
離れの一番奥に居たFさんが言うには
「あの神社にはいつの頃からか魔が住み着いている、魔は女で、気に入った男がいると連れて行ってしまう。
今までも何人もの男が止めたにも関わらずあの神社へ行きこうなった。
こいつらは神社の階段の下で白目をむき涎を垂らして転がっていた、なるべく払ってみるがもう手遅れだろう。
近くに居るだけでも絶望感が襲ってくるのは、こいつらの中に魔が入り込んだからだ」
と言ったのです。
お祓いは、Fさんと他に5人の方がC男、D男や私達を取り囲み、行われました。
いいと言われるまで絶対に話してはいけない、目を開けてはいけないと言われ行われたのですが、どの位時間が経ったのかわかりませんが集中力が途切れた瞬間に耳元で誰かが
「邪魔をするならお前も同じようにしてやろう」
と女性の声で囁かれました。
咄嗟に両手で耳を塞ぎましたが、明らかに何者かが私の背中に覆いかぶさっている感覚がありました。
口を利かないように目を開けないように必死に耐えて耐えて、Fさんの声で「もう終わった」と声をかけられるまで、本当に怖かったです。
C男とD男は発見された時よりも状況は良くなっているようですが、結局双方のご両親が話しかけても正気を取り戻す事はなく、精神病院へと入院する事になったそうです。
私達3人は後からFさんに
「あの時、あなた達の周りを女がうろうろと歩いていたり、話しかけていた。よくアレに耐えきりましたね」
と言われました。
A子B子も私同様に女に話しかけられたようで、私達は逃げるように各自の家へと帰りました。
今思い出してもあの女の声は本当に恐ろしい、この世のモノとは思えない声色でした。
あんな体験は二度としたくありません。