拡がる影

拡がる影 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

『俺は密漁をしていた。
密漁といっても採集禁止の魚や水生昆虫を採ってきてマニアに売るっていう簡単なやつでそれだけで暮らしていけるほど儲けは出ないけど割といい小遣い稼ぎになった。

その日俺はSと一緒にN県の山奥の集落に来てた。
Sは高校の頃の後輩でよく一緒に密漁をしていてその日も〇〇という魚を採るため一緒に集落に来てた。
俺はいつも真夜中に魚を採るようにしていてその日も夜の12時頃にその集落に付いた。

調べた限りだとその集落は過疎がかなり進んでいて空き家も多いらしく密漁には絶好の場所だった。
俺たちはその集落の端にある小さなため池に目を付けてた。
ため池は平屋の学校の裏にあり何より周りが林になっており村からじゃ木や校舎の影になっていたのがよかった。

事前に調べた限りだと学校は何年も前に廃校になっており、特に問題ないと判断した
ため池の水深は0.8メートルほどで岸際には水草が生えており〇〇の環境にとても適していた。

しかし網をいれて何度掬っても〇〇どころかメダカ1匹も見つからない。
Sも同じだったようで場所を変えようって提案してきた。
Sが言うにはグーグルマップでため池を見つけたときに学校の敷地内に小さな池があるのに気づいたらしい。

俺は高速まで使ってここまで来たのに何もなしじゃ帰れないなと思いSと一緒に学校の敷地に入る事にした。
ちょうどそばに裏門のようなものがありそこから入る事にした。

池はすぐに見つかった。
池はとても小さく畳1畳分ぐらいの大きさの池だった。
すぐに俺とSは網を突っ込んで見た。

狙いの〇〇は採れなかったが小魚は結構網に入った。
ただどの魚も片方の目が白く潰れており気味が悪かったがSが言うにはただの病気らしい。
なんでも昔見た釣りマンガでそういう話があったらしいのだ。

ひとしきり掬ったが、〇〇が採れないので2時前には諦めて帰ることにした。
Sを奴の家の側まで送り家に帰るとだいたい5時ぐらいで眠かったのですぐ寝ることにした。

次の日昼頃に起きてから携帯を見るとSから不在着信が何件もきていた。
俺は心配になってSに電話をかけたが応答はない。

その時なにかに見られてる気がしたがそん時は気のせいだと思って気にもとめなかった。
夕方になると視線がはっきりしてきた。
ずっと監視されてる気分なのだ。
おかしいと思い視線の方向を見るが何もない。
夜になって部屋の明かりをつけた時にやっと気づいた。

影の中から見られてるんだ。

俺は怖くなり部屋中の明かりをつけて寝た。
明かりをつけると視線は消えた。
明日は朝一番に神社にでもいこうと思った。

起きるとすぐに異変に気づいた。
影が拡がってるのだ。
俺は昨日影の中に何かがいると思っていたが違う。
影そのものに目があって俺を見てる。
電気をつけてもお構いなしだ。

少しづつ拡がってる。

まだこの部屋には来てないがいずれ来るだろう。
今すぐにでも逃げたいがもしものためにこれだけ書いておきたかった。

今後ろを見たがドアの隙間から黒いのが見える。
ちょうどいいここまでだ、さよなら俺は逃げる』

これが叔父の家で部屋を片付けてる時に出てきたノートに書いてあったことです。
原文は殴り書きで語尾がめちゃくちゃだったので内容は忠実になるように気をつけながらこの文に直しました。

叔父は何年か前に交通事故で死にました。
赤信号の横断歩道を駆け抜けようとしてトラックに轢かれたと聞いてます。

私はこのノートを見つけたとき叔父は頭がおかしくなってしまったのかなと思い、このノートは私だけの秘密にして近いうちに捨てようと思いました。
弟が死んで悲しんでる父をさらに悲しませる必要は無いですからね。

叔父の葬式に高校時代の友人であるTさんが来ました。
私はノートに載ってたSさんがどんな方なのか気になったので少し話してみました。

自分が叔父の姪でよく高校時代の思い出を聞いておりSさんという後輩と仲が良かったと聞いているがSさんは来ないのか?と聞いてみました。

Sさんは叔父が死ぬ2日前に亡くなってました。

Tさんは悪いことが続くものだと嘆いてました。
はっきりとわかってないらしいですが急性アルコール中毒という噂らしいです。

私は恐ろしくなりました。
叔父のノートに書かれた事が本当のように思えてきたからです。
かといって誰かに相談する訳にもいきません。
こんなこと信じてもらえるとは思えないので。

最近ここの存在を知ったので悩んだ末書き込むことに決めました。
これでかなり心が軽くなりましたありがとう。

叔父のノートは破って捨てました。

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